松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



シンプル

シンプル イズ ベストとよく言いますが、これは時と場合によりけりかもしれません。

和菓子は色合いを艶やかに、そして華やかに仕上げるところにその良さを見出す傾向にあると思います。

しかし、派手とは対極にある慎ましく仕上げた和菓子にも赴きがあり、奥床しく感じるものがあると私は思います。

美術の世界にも伊藤若冲のようなカラフルで鮮やかな表現もありますが、長谷川等伯のようにモノクロで一見すると控えめに見えますが、そこに美を追求する表現も間違いなくあると思います。

かの千利休もコンパクトで抑えめなところに赴きを追求した茶道の先人でした。

前置きは長くなりましたが、羽二重餅製の生菓子をお店に並べました。



羽二重餅の生地に巻水の焼印をあしらった、至極シンプルな生菓子です。

一年を通して羽二重餅の生地の生菓子は数々つくりますが、やはり着色せずそのままの色合いを前面に押し出したほうがその良さがより引き立つのではないかと考えています。

純白ではない少しクリーム色がかった羽二重餅の生地はそこに優しさが表れるのではないでしょうか。

季節によって羽二重餅の生地も着色することはありますが、今回はそのままの風合いをお楽しみいただけたらと思っております。

巻水の図案も静寂を連想させ、禅にも通ずるものがあると思います。

シンプル イズ ベスト。

羽二重餅はこれに尽きるのではないでしょうか。

私はそう考えています。