松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



星の光

昨日に引き続き、レモンの生菓子のご紹介です。


頂に金のお星様をあしらった葛製の蒸し菓子です。

中心にはこしあん。そしてレモン果汁たっぷり含んだ備中白小豆こしあん。外には葛と三つの層を成して出来上がっております。

毎年書いているかもしれませんが、レモンと言えば高村光太郎の智恵子抄。

哀しみとレモンの瑞々しさや爽やかさとがとても上手にマッチした作品となっています。

私がとても大好きな詩。この詩を思い浮かべながら毎年レモンの生菓子を私は作るのです。

ここに添付しておきます。

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

かなしく白くあかるい死の床で

私の手からとつた一つのレモンを

あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ

トパアズいろの香気が立つ

その数滴の天のものなるレモンの汁は

ぱつとあなたの意識を正常にした

あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ

わたしの手を握るあなたの力の健康さよ

あなたの咽喉に嵐はあるが

かういふ命の瀬戸ぎはに

智恵子はもとの智恵子となり

生涯の愛を一瞬にかたむけた

それからひと時

昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして

あなたの機関ははそれなり止まつた

写真の前に挿した桜の花かげに

すずしく光るレモンを今日も置かう