松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



心乱れて

「心が乱れた時、お客様や友達にそれが伝わってははいけません。自分の中で何とか噛み砕き、消化して笑顔で相対するのだ。」

松屋長春の創業者である祖父がいつもそう言っていました。祖父はお客様と友人たちにはそれを忠実に守っていました。

久しぶりに私は昨日、人との関係で心が乱れました。

一旦そうなりますと、常に頭にその事がずっと残り、色々思いを巡らせる事になります。

ここ数年、幼馴染の死以外はほとんど心を乱す事が無かった私ですが、久しぶりにそれを経験して動揺しました。

誰もが出来るだけ毎日を平穏に生きたい。そう思っているはずです。少しの壁でもへこたれてしまいそうにはなってしまうのですが、今の私はなかなかへこたれません。

京都の修行先で人間関係に悩み、ずっと苦しんできました。そして結婚し、数年前まで家庭内の苦労も随分多かった事を思い出します。

経験とは面白いもので多くの障害を乗り越えていくうちに、それらを上手に自分の中で消化する術を見つけていったのです。

私の中での消化法は四つ。

一つは娘たちとの会話や触れ合い。次には友人達との休日の過ごし方。そして料理と仕事です。

娘たちとの会話はとても楽しみで学校であった事や友達の事、バカを言い合い笑い合う事までがストレス解消の手助けになっています。また、友人達とも同じように心が救われています。友人達には日頃娘たちや両親にも話さないような悩み事までお世話になっています。料理と仕事は同じ意味合いとなりますが、自分が一生懸命作ったものを相手が喜んでくれることに大きな喜びを感じ、自分を改めて褒めてやりたくなるような感情が押し寄せるからであります。

今夜は三女と二人で夕飯の用意、片付けまで一緒にやりました。

今夜はすき焼き丼を作りました。

学校の事、友達の事、宿題の事、これから先の事。たくさん話していくうちに心が乱れていた事などすっかり忘れてスッキリした自分が今います。

幸せを鐘を鳴らすのは誰彼ではなく、自分なのです。自分の中で何とか上手に噛み砕いて家族や友人、そしてお客様には迷惑にならないように早めに消化するのだと、祖父の言っていた事がやっと身に染みてわかりました。

出来るだけ早く解決する!

このヒントは外には無く自分の内にあるものではないでしょうか。

今夜はそんな事を真剣に考えました。