松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



しおり

幸せってなんだろう?

ふと、そんな考えが私の頭の中によぎりました。

幸せって長いようで短くもある自分自身の人生という本の中に、しおりを一つひとつ挟み込むものではないか。そんな風に思っています。

後でふっくらとした優しい思い出として思い出される、幸せだったと思えるような感情は、本の栞のようにきちんと自身の記憶の中にしっかりと整理されているものなのです。

そろそろ私の娘たちへの日課?の一つである、お弁当づくり「弁カツ」が終焉を迎えようとしています。

三女も高校卒業を控えて、お弁当が毎日必要ではなくなってきました。

卒業までの間、いつ終わってしまうのかもわからない中、フィナーレくらいは娘の大好物を思う存分入れてやろうと毎日意気込んでつくっているところです。



ある日のお弁当。

大好物の鶏そぼろご飯に合わせたおかずは、焼きそば、卵焼き、ズッキーニのハーブ焼き、さつまいものレモンバター煮、黒毛和牛ステーキ肉のスパイス炒め。

全部が娘たちが大好きなものばっかりを集めました。彩りなどは関係なく、好きなおかずたっぷりてんこ盛りです。

私が「弁カツ」を始めた時は、どんなお母さんたちも感ずるような面倒くさいという感情が私自身の中にありました。

意識改革!と大それたことを言うつもりは毛頭ございませんが、自分の中に楽しみや喜びを見出していくうちに辛苦という感情から全て脱却でき、「ハレルヤ!」と叫んでもおかしくないような、神聖な感情に変わっていく自分に出会える事が出来ました。

これは天が私に与えた試練ではなく、娘たちが私に与えてくれた特別な歓びなのです。娘たちと父親である私を、簡単に解くことはできないような強い絆で繋げてくれる重要な役割であると受け止めた事が後々の私に大きな影響を及ぼしてくれたのだと、今でも感謝しています。

友人たちに「美味しそうだね!いい匂いのお弁当だね!」と褒められて、鼻をふくらませて帰ってくる娘たちの言葉で、同じように鼻をぷっくりとふくらませる私がいました。

それが冷凍食品に頼らず、目一杯背伸びをしてつくり続けた自分へのご褒美でもあったのだと、今となってはそんな風に思っているところです。

今は誰もが経験できないような「弁カツ」を長きに渡ってやらせてもらえた感謝の気持ちでいっぱいです。

娘たちよ、これまで毎日お弁当つくらせてくれてありがとうございました。

おまえたち三人のお弁当づくりに携われたこと、私の素晴らしい一生の思い出となりました。

お父さんはこの私の「弁カツ」が君たちの将来に必ず役に立つことと思っています。また私がこの先人生を振り返ってみた時に、「あの時、一生懸命取り組んでいて本当に良かった!」そう微笑みながら思い返せるような幸せの記憶の栞として残して行きたいと思っています。

フルスイングしてみないとわからないことって、この世の中にはたくさんあると思います。

私の人生の中でもそんなに多くは無いであろう、フルスイングの一つだったのがこのお弁当づくりでした。