松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



これが私の役割

この軽羹製の蒸し菓子を「春の詩」と名付けてお店に並べました。



春にはメロディなどなく、音符も付ける事ができませんが、春には軽快なリズムがイメージに合いそうです。

一見、うすぼらけと形容しても良いほどにうっすらと薄黄色と薄紅色と薄紫色を音符のように並べました。

ミニマルなこの和菓子にいっぱいの春のメロディを詰め込んだつもりです。

世界じゅうの人々が笑顔を忘れてしまいそうな、辛く苦しいニュースばかりを毎日目にしています。

和菓子職人としての私の役割は、人々に笑顔と少しばかりの安心感というものを皆さまに届ける事であるのではないかと近頃そんな風に強く考えるようになりました。

現実逃避という言葉にしてしまいますと、とても罰当たりな感覚になってしまうことを恐れてしまいますが、ニュアンスとしてはそんな感じになるでしょうか。

今までのようにどこへでも自由に出かけられず、家に閉じこもりがちな今だからこそ、私がこうしてご紹介いたします和菓子を写真だけでも見ていただき、ついででも良いので私のつたない文章をお読みいただいて、多くの方々に少しでもホッとした気持ちを持ってもらえたらいいな。

そんな風に心から思っています。

和菓子は随分昔から色んな方々の色んな人生の場面でそっと寄り添ってきました。

和菓子はいつの時も主役ではありませんでしたが、人の心にそっと優しく寄り添うのが役目であったと思います。

微力ながらではありますが可愛い和菓子たちと私のつたない文章で皆さまにこれからもそっと寄り添っていきたいと思っています。

たくさんの方々に少しでも笑顔が届きますように。