松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



出会いとはこういうもの

自分の感性、フィーリングに合ったものに出会うと電気が走ったようにビビッとくる事があります。

私は絵画がとても好きで、絵画から多大なるインスピレーションの恩恵を受けていると言っても過言ではありません。

美術館へは時間のある限り、足繁く通っているつもりですが、バチっと自分の感性にハマる絵や美術品というものはなかなか出てきません。

先日、ひょんなことからこの絵を知りました。


ムーンライト レーンと銘打たれた絵です。

作者はジョン アトキンソン グリムショーというイギリスの画家です。

満月に照らされた夜、薄明かりの中を親子でしょうか、いそいそと家路につく姿を幻想的に表現した一枚です。

息を飲む静寂を感じます。そこには夜の恐ろしさも感じ得ます。グリム童話のような少しホラーチックに仕上げているようでもあります。

私はこの絵をパッと見た瞬間にとても惹かれました。

なぜなのかは自分でもわかりませんが、何度見返しても飽きさせない凄みを感じました。

出会いとはこういうもの。

自分を惹きつけて離さない絵や人はいつまでも心に残るものです。

こうして特定の絵を好きになったり、特定の人に興味を持ったりするのでしょう。

ジョン アトキンソン グリムショーの絵画を二点ほどご紹介いたします。


最初の絵と同様に夕方から夜にかけての作品が多く見受けられます。また彼は満月にも随分と執着していたようで、多くの満月の関連作品をこの世に送り出してきました。

いい作品に出会うことができました。

この絵との衝撃的な出会いでしたが、皆さまはこの絵を見られてどうお感じになられたのでしょうか。
感受性は人それぞれ。受け手によって違うものです。
どうお感じになられたのか、とても興味深く感じます。

絵っていいですね。たった一枚の絵ですが、そこにたくさんの物語がぎっしりと詰め込まれています。

お店とお客様の関係について

世界でも有名な五人の美食ブロガーに密着したドキュメンタリー映画です。

今回でこの映画を観るのは二回目です。


この五人はミシュランガイドをもとに世界の名だたるレストランへ通う事に心血を注ぐ人たちのお話です。

ミシュランガイドの星の定義をこの映画で初めて知りました。

一つ星
そのカテゴリーで特に美味しい

二つ星
遠回りする価値がある

三つ星
旅行して行く価値がある

知らなかったです。

この映画では有名なレストランが多く出てきます。

マエモ(オスロー)
ゼラニウム(コペンハーゲン)
アンバー(香港)
アスカ(ニューヨーク)
ファヴィケン(ヤェルペン)
フロコン ドーセル(メジェーヴ)
41デグリーズ エクスペリエンス(バルセロナ)
ヘドネ(ロンドン)
ジュード ドラゴン(マカオ)
キャッツ デリカテッセン(ニューヨーク)
菊乃井(京都)
ワットリー マナー(マームズベリー)
WP〜50(ニューヨーク)
ピエール ガニェール(パリ)
龍井草堂(杭州)

まだまだあったと思います。多すぎて漏れがあるかもしれません。私が知っているのは京都の菊乃井だけです。

この映画がいいのか悪いのかは別としまして、私が一番感じた事はお客様であるブロガーの力が偉大過ぎる事でした。
インターネットを通じての発信が強烈であるため、お店側がブロガーに細心の注意を払っています。そしてブロガーも自分の偉大さを知っており、お店側になんの躊躇もなく自分の考えをぶつけます。
お店側がビクビクしながらこのブロガーたちの一挙手一投足に注目し、お出迎えをしているところにとても違和感を覚えました。

私のイメージするお店とお客様の良い関係のバランスが大きく崩れている事にとてもショックを受けました。

現代は食べログやグーグルマップをはじめ、インターネット上には様々なお店の情報が溢れかえっています。
店の事を知るにはとても便利ではあると思いますが、同時に一人の価値観だけで人の考えにも影響を大きく与えてしまう心配があると考えています。

やはりお店とお客様がいい関係でいるには、味だけでなく互いの少しばかりの遠慮といいますか、気遣いがとても肝心なのではないかと考えます。

もちろんお店にとってお客様の応援なくしては成り立ちません。しかし、お客様が気持ち良くお越しいただくような環境があってこそのお店ですし、お店もまたお客様に喜んでご来店いただけるようなトータルでのサービスも重要だと思います。
この映画を観てそんな事を深く考えさせられました。

SNSなどの進化は必要ですが、進化に伴い副作用も大きい事を改めて知りました。
人と人は心と心の繋がりが一番大事ではないでしょうか。
私は自分がお客としてお店へ伺う際には一番その事に留意しています。また、自分の子供たちにもその事については常々しっかりと伝えているつもりです。

全てのお客様に均等に心から寄り添い、接客しなければ。そう再確認したところです。

おお、インターネットって本当にこわい。この映画を観て本当にそう思いました。本名も名乗らないまま、思うに任せて好き勝手に文章は書きやすいですものね。これが面と向かってではそういう訳にはいかないはずです。やはり、人前でもインターネット上でもモラルやマナーを併せ持ちながら節度ある行動を取りたいものです。

自分を諭してくれる教師のような存在は様々なところにあります。
映画は私の一番の教科書です。

色々な所にアンテナを張り巡らせ、しっかりと自分の襟を正しながら日々を過ごさなければなりません。

色とディスプレイ

桔梗の花


外郎製の生菓子です。

中は備中白小豆こしあんです。

桔梗は秋の七草の一つに数えられます。

「萩、桔梗、女郎花、藤袴、撫子、尾花(すすきの事です)、葛」

秋の七草はこうして見てみますと、口に入るものは葛の根のでんぷん質しかありません。

一方で春の七草は

「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」

春の七草は漢字が難しいので敢えて平仮名で書きましたが、全て口に入るもの。七草がゆが良く知られていますよね。

春と秋ではこのように同じような括りにしてあっても、実際は180度真逆のものになっています。

とても面白く、興味深い事であります。

誰が選定したのでしょうか?それについても興味が尽きません。

さて、この桔梗の花を模した生菓子ですが。

お店に実際に並べますと、紫色がとても映えてしっくりきます。

夏の間、このような色合いの生菓子が無かったため、全体をこの紫の生菓子がパリッと引き締めてくれます。

色って本当に大事。

思い付いた和菓子を雑然とお店に並べるのではなく、全体像をイメージしながらつくるものを考えなければなりませんし、ディスプレイする際にもそれを頭に入れながら取り組まなければなりません。

お店に来られた際にはこの「色」と「ディスプレイ」にも目を向けていただけましたら違った視点で松屋長春を知っていただける機会となるのではないかと存じます。