松屋長春の和菓子便り
尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。
初心忘ルベカラズ
新年のご挨拶。
あけましておめでとうございます。今年も松屋長春をどうぞ宜しくお願いいたします。
「初心忘ルベカラズ」という言葉があります。
私の修行先であった京都の末富を卒業する時に、旦那さんから贈っていただいた色紙です。

末富に入ってすぐ、桜餅をつくるところからスタートした修行時代。
「この世界に入った最初の頃の気持ちをいつまでも忘れずに頑張るんやで!」
ありがたい言葉とともにいただいた事を懐かしく思い出します。
私はこの「初心忘ルベカラズ」という言葉を違った意味合いで捉えています。
なぜならばいつまでも初心を持ったまま生きる事など誰もできないのだという事を知っているからです。
この言葉はたてまえ。そのくらいの謙虚さを持ちながら頑張りなさいという意味があれど、書いてある言葉のままを受け取るべきではないのだと解釈しています。
しかし、今でもこの旦那さんからのメッセージと今でも忘れられないあの旦那さんの絵と字を見返してみますと、ピリっと気持ちが引き締まります。
決して修行の者たちに優しいお店ではなく、とても厳しい苦労連続の日々を過ごしましたが、いざ卒業して30年近くも経ちますと旦那さんの奥底にある優しい心の内がはっきり見出されてくるものです。
それでいいのではないでしょうか。
今は旦那さんや奥さんと過ごした懐かしくもあたたかな思い出しか残っておりません。
面白いもので、理不尽な事柄たちや辛く苦しかった一瞬一瞬の出来事たちが今となっては程よいスパイスとなって、ある意味心地よい記憶へと成り代わってしまいました。
ここで、今、学業や仕事やその他のことで大きく悩んでおられる方々へ私が強くお伝えしたいことは、「人生には大きな波がある」ということです。
いいことはずっと続きませんし、同じように悪いこともずっと続きません。
悪いことはずっと続かないように努力しなければなりませんし、いいことがずっと続くように努力もしなければなりません。
苦難に立ち向かう姿勢が時には必要であり向かい続けた結果、我慢強く人に対して優しくいられる今の自分があると思っています。
やめてしまうのはいつでもできる簡単なこと。やめ癖を付けてしまわないよう我慢強く続けていくことも大切であります。
頑張りましょう。私もみなさんに負けないように頑張り続けます。
さあ、新しい年のはじまりです。