松屋長春の和菓子便り
尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。
頭文字
「からころも(唐衣)
きつつなれにし(着つつ慣れにし)
つましあれば(妻しあれば)
はるばるきぬる(はるばる来ぬる)
たびをしぞおもふ(旅をしぞ思ふ)」
在原業平が都に残した妻の事を思い、カキツバタが咲き乱れる旅先で詠んだ詩であります。
この詩にはトリックがあり、頭文字を一文字ずつ読むと、か.き.つ.は.た、となります。
このトリックを明かすことによって、燕子花の季節だという事がわかります。
非常に趣き深き詩でありますし、気高さや妻への深い愛情が感じられ、在原業平の人格がこの詩から読み取ることができるようです。
少し前の事ですが、SNSの文章を書く時に頭文字を一文字ずつ取って不倫相手へメッセージを送ったという芸能人のゴシップがありましたが、カラクリは同じでもそれとこれとでは品位というものが天と地ほどもかけ離れていています。
非常に情けない話であります。
「人の振り見て我が振り直せ」とはよく言ったものですが、これからも人に胸を張って生きていきたいとあらためてそう思った次第です。
毎度の長い前置きとなりましたが。
私が修行先で習い、30年近く毎年松屋長春でも販売をしている「唐衣」と銘打った外郎製の生菓子が本日より販売を開始いたします。


紫と乳白色のファジーさが何とも魅力のある和菓子であります。