松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



一度だけでいいから

今年も唐衣をお店に並べることができました。



この生菓子は私の修行先、末富で習ったものです。

思い出深いこの季節の生菓子です。

末富のご主人、山口富蔵氏は生き字引と形容されるほど物知りであります。特に和菓子の事に関して言えば、右に出る者はいないと断言できます。私が何を聞いても必ず正確な答えを出して下さいました。

また、和菓子愛も同じように日本一であると私は思っています。いつも色紙や色鉛筆を近くに置きながら深く思案されていたのを今日の事であるかのようにしっかりと思い出されます。

毎日のように叱られていたのも、ついでに思い出してしまいました。

自分にも厳しいご主人でしたが、同じように修行の者たちにもとても厳しい方でありました。

叱られはしましたが、褒められた事など一度もありません。

一度だけでいいから「よく頑張ったな!」

そう褒められてみたいです。

そんな叶いもしないような淡い望みを抱きながら、今年もこの唐衣をつくっております。