松屋長春の和菓子便り
尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。
日本一
松屋長春は日本一の和菓子屋ではありません。
田舎にある小さな小さなお店です。
当然、私も日本一の和菓子職人ではありません。
片田舎の名もなきおじさん職人です。
でも、こんなお店でも日本一の材料を使う事ができます。
私が修行を終えて帰ってきてから、独自のルートを開拓して、日本で一番素晴らしいと言われる材料を手に入れることができるようになりました。
和菓子で一番大切な材料と言えば、間違いなく小豆であります。
松屋長春の和菓子の大半を占める小豆は丹波大納言小豆と備中白小豆です。
作付面積がとても少なく、最も入手困難と言われるこの小豆たちを年間で安定して確保できることに幸せを感じていますし、取引先である穀物商の方々にも感謝しています。
香り、深いうまみ、素晴らしい味わい。この上をいく小豆は見当たりません。
当然、小豆の値段も日本一であります。
私は、この素晴らしき小豆を上手に調理するための腕を磨くのみです。
春夏秋冬、それぞれの季節によって仕上げを変化させることによって、安定感のあるあんに、お客様が「ああ、いつもと変わらない味だ」と感じていただけるあんになるのです。
自己満足になるでしょうが、日本一の小豆を扱うことができることに強い自負がありますし、強い誇りを感じます。
小豆だけに限ったことではありません。松屋長春は美味しいものをつくるために、全ての材料に妥協しないようにしています。
口に入れるもの全てに共通することでありますが、お客様第一に考えること。これが一番でならなくてはなりません。
どのお店にも負けない、素晴らしい材料を使っていても適正価格で。
儲け重視の商売であっては決してならないのであります。
夜桜
仕事を終えて30分ほどの短い時間でしたが、今年も桜花に会いに行ってきました。
今年は近所、一宮市を流れる大江川沿いの桜です。
ここ何年かずっと、私は夜桜しか見に行っていない気がしています。
どうしても日中にゆっくりと出かける時間がないのです。
日中の桜の趣深いところは、あの薄紅色の花が太陽に照らされ、風に優しく揺れる姿であると私は思います。
一方、夜桜の素晴らしさは桜の花が妖艶に映るところだと私は感じています。
昼間には美しい薄紅色に見える桜の花が、夜にはどう目を凝らしても、うすら白き色合いにしか見えないのです。
私はあの、例えようのない夜の白桜が大好きでたまらないのです。
今年もなんとか夜の桜だけでも愛でることができました。
ああ、この次は毎年恒例の五条川の「花筏」だなぁ。
「花いかだ」はどう頑張っても、夜の時間にしっかりとこの目に焼き付ける事ができません。川面に浮かんではただよう小さな桜花が見えないのです。
「花いかだ」ばかりは特別に日中に時間を設けたいところですね。
もし、日中に時間をつくることが出来たならば、桜が素晴らしいフィナーレを魅せてくれることでしょう。
無理矢理「花いかだ」を愛でる時間をつくるしかなさそうであります。
共同作業
松屋長春へ最近ご来店くださいましたお客様はよくご存知のことと思いますが、お店の扉がとても重くて開けづらかったのではないかと存じます。
今日、仕事終わりに父と一緒に扉の下の滑車を取り替えました。
ものすごくスムーズに開閉できるようになりました。
ここでお客様に対してご注意を促さなければならないのですが。
「勢いづいて力強く開けないでくださいね」
今までと真逆のお願いとなってしまい、申し訳ございません。
久しぶりに父と共同作業をし、やった~!うまくいったぞ~!などと二人で大声で笑い合いました。
私はやっぱり父がたまらなく大好きです。