松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



四方の春

年が明けますと、一気に気持ちがパッと明るくなったような気がしますね。




暦の上、12月31日から一日進んだだけなのに。




クリスマスに雪を連想していたものが、新年を迎えると芽吹きをイメージしてしまいます。




本当はこれからが一層寒くなり、大雪降るというのが定説なのに。




どうしてこんな感覚になるのでしょうか。




本日は春をイメージした和菓子のご紹介です。




「四方の春」と銘打ってお店に並べています。








同系色のグラデーション。




暖かみのある色合いで辺り一面、はるいろになりますようにという願いを込めてつくります。




中のあんは備中白小豆こしあん。そのこしあんにたっぷりの柚子を搾り入れてあるので、香り高き味わいが特徴的であります。




柑橘って非常に興味深いもので、柚子、酢橘、かぼす、シークワーサー、ライム、レモンなどなど。どれも似ていて完全に非なるもの。それぞれの特徴が際立っていて用途も違います。




使い勝手も違うので、置き換えなどは決してできないものです。




こんな事を書いていますと、柚子以外の柑橘類も和菓子に用いたくなってしまいました。




機会があれば、トライしてみたいと考えています。

初海

凪の静かな海をイメージして。








黒糖たっぷり含ませた丹波大納言小豆こしあんを白、青、水色と三色の伊勢芋100%のあんを海に見立てて挟みました。








最高級の原材料を使った香りと深い味わいが特徴的な和菓子です。




私は凪の海に平穏な心を重ね合わせます。




心穏やかな精神はどこか鏡のような海面の姿と似ているように感じるんです。




この和菓子は仕上げるのに非常に長い時間を要するのですが、精神を統一して集中していないと上手に出来上がりません。




断面をご覧いただきますと、一手間ふた手間かかっている事を知っていただけると思います。




この和菓子に携わるとき、特に心を穏やかにしている自分がいます。

平和の色ってどんな色?

平和の色ってどんな色なのか、みなさまはご存知でしょうか?




年末年始にご来店くださいますお客様でもご存知ない方もおいでかもしれませんが、松屋長春では正月前後に販売する新年菓の一つに「勅題」を題材にした和菓子を毎年つくることにしています。




「勅題」とは天皇陛下が新年の歌会始に出題される題目の事を言います。




毎年、必ずその題目が変わるわけでありますが、2024年のお題目は「和」であります。




松屋長春の御勅題菓子「和」は平和をイメージしてつくりました。




冒頭、みなさまにご質問しました答えは緑色。




優しい青とも碧とも言えるような色合いに染めたふわふわの羽二重餅の生地の頂に二色の輪を配しました。




「平和の輪が広がりますように。」




そんな願いを込めてつくった次第です。












清水寺のご住職が書く去年の一文字は「争」ではありませんでしたが、私にとってはニュースで毎日報じられる戦争、「争」が一番に印象に残った一年となってしまいました。




ロシアとウクライナの戦争はいつまで続くのだろうか。また、新たにイスラエルとパレスチナ(実際にはハマス)の戦争が新たに勃発してしまいました。




他にも私たちが知らない、ニュースでは報じられないような紛争は世界中に多く存在します。




平和でありますように、なんて平和ボケしている日本人の私が言葉を発しても何の説得力もないかもしれませんが、そんな私だって平和を切に願う事くらいはできます。




戦争だけではありません。




ちょうど昨日、能登半島にて阪神淡路大震災や東日本大震災を思い起こさせるような大きな地震がありました。




私が住む稲沢市も不気味だと感じるような大きな横揺れで、お客様もスタッフも私たちも店の外に一時的に退避したほどでした。




被災されました多くの方々の出来るだけ早い心の平穏とインフラの再整備を願ってやみません。




前述しました事を全部ひっくるめて。




心を込めてつくりました。




今年はキラキラしたきらめく世の中になあれ。




なってくれ。