松屋長春の和菓子便り
尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。
さといも
九月に入りますと、あっという間に十五夜がやってきます。
今年は9月21日が中秋の名月を愛でる日となります。
この日は美しい月がみられる事で広く知られていますが、今は綺麗なお月さまを眺めるだけで、昔の人々のように御供物をする習慣は薄れてしまってきているように感じています。
まぁ、そうですよね。
収穫を感謝する意味合いのある御供物は、まず収穫に携わっておられる、家に田畑のある人々の行事であります。
スーパーや八百屋さんで食材を買い求める事がほとんどの私たちにとっては無縁のものとしてだんだん忘れ去られていってしまうのかもしれません。
私の役割は十五夜の日が近づいてくると、十五夜にまつわる和菓子をつくり、その説明をできるだけ細かく記して多くの方々に広く知っていただく事であります。
地道な活動が少しでも実を結んでいって欲しいと思っています。
さて、本日ご紹介の和菓子は
「芋名月」
十五夜の別名である「芋名月」は、収穫に感謝して里芋をお供えすることからこう呼ばれています。
見たまんまですが、里芋を模してつくっています。
十五夜が過ぎる頃にはもうお店に並ばない短期間だけの和菓子です。
キセワタ
9月9日は重陽の節句です。
別名、菊の節句と言います。
ひな祭りやこどもの日や七夕とは違って、あまり知られていないかもしれませんね。
他の節句が広く知られているのは特別なイベントがあり、人の記憶にも残りやすいということがあるからでしょう。
重陽の節句の日の前日に菊の花に綿を被せ、夜露を綿にたっぷりと染み込ませます。同時に濡れた綿には菊の花の香りもしっかりと乗り移ります。
その綿で身体を拭いて長寿を願う行事がこの重陽の節句なのであります。菊の節句という別名というのもわかりやすい事であると思います。
さて、本日ご紹介の生菓子は「着せ綿」
菊の花に綿を被せた姿を模した和菓子であります。
こなしの生地にヘラを入れ、頂には伊勢芋100%の練り薯蕷をあしらいました。
本日、明日の二日間だけの販売となります。
お電話でのお取り置きも可能です。
こころの風景
私の住むまち稲沢市は今でこそ減ってしまいましたが、田んぼがとにかく多いまちでした。
まだまだ田んぼは今でも残っていますが、近所は特に住宅化が進んでしまったので少し寂しい気持ちもあります。
小学生の頃までは家の裏あたりは全部田んぼで、私の一番大好きな遊び場だったのですが。
先日、娘たちと車に乗り込んでドライブしました。
私は非常にバチ当たりな父親で、娘たちと車に乗る時は決まってビールを持ち込んで後部座席の左側でいい気持ちになっています。
ちょうどこの時にふと外を見てみると、稲がすくすくと育っているのに気付きました。
少年期は田んぼでしょっちゅう遊びまわっていた私ですが、大人になった今、しっかり自然と対峙する心のゆとりが次第に無くなってしまったようです。
私にとって代表的な日本の風景は海でも富士山でもなく、やはり稲が広がる田園風景が一番しっくりきます。
カエルの合唱が身近にきこえる田んぼが一番落ち着くんです。
面白いもので、稲は背比べをしません。
キッチリ同じ背丈で成長します。
黄金色の稲も間違いなくいいけれど、濃い緑が一番気持ちいい!
やっぱり田んぼは私の中で一番のこころの風景です。