松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



命の確認

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
私の手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関ははそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう

高村光太郎の作品「智恵子抄」の中の「レモン哀歌」です。

何度読んでも私の心を強く打つ私のお気に入りの詩です。

生と死をこれほどまでにくっきりと対照的に表現したものはこの詩以外には私は何も浮かびません。

命を象徴するものとして詩中にレモンを中心に置くことによって、より生の喜びや幸せを際立たせているように感じさせます。

レモンはそれほど神聖なものとして、命の確認をするものとして、爽やかで清らかなものとして高村光太郎は捉えていたのでしょう。

なにものにも代え難い香気と酸味がレモンが愛される一番の理由だと思います。

先日よりレモンを使った和菓子を立て続けにご紹介してまいりました。

今回が最後のご紹介となりそうです。


レモン羊羹


仕上がりました。


レモン羹

そして


星の光と合わせてお店に並んでおります。

神聖なるレモン、高貴なるレモン。

レモンそのものの優しさがダイレクトに伝わる和菓子たちに仕上がっていると思います。