松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



屈強なからだ

私は毎日豆を煮ます。

ある日はこしあん、ある日は粒あんを。

写真は丹波春日大納言小豆の粒あんが出来上がった瞬間を撮ったものです。



色々な方々によく言われる言葉に「和菓子屋さんは本当に繊細な仕事ですねぇ」があります。

もちろん間違ってはいませんが、和菓子をつくっている時だけが繊細なのであって、実は力仕事がとても多いという事はあまり知っていただいておりません。

写真のあんの入れ物一つでも20キロ以上あります。当然、父も母もこれを今でも容易く持ちます。

しかし、両親が高齢となってきた今、仕事場の力仕事のほとんどが私が担うようになりました。

特に毎日の小豆からあんへと仕上げる「煮炊きの作業」が一番大変であります。

こしあんを搾る搾り袋の重量は50~60キロ。これを難なく持ち上げなくてはなりません。

また、煮炊機の周りは夏場になると40度は軽く超えてしまいます。そして当然湿度も80%を超えてきます。

過酷な労働が伴って、やっと和菓子が出来上がるのです。

知り合いの和菓子屋さんを見渡してみますと、だいたいがっしりとした体つきの方が多いように思います。(もちろん細い体つきの方もおいでですが。)

職人皆が頑丈で力持ちでなければ、この和菓子屋は続けられないのではないかと考えています。

私も身体のところどころに少々の痛みを抱える時こそあれど、故障した事は今まで一度もありません。

そう思い返してみますと、屈強なからだに産んで育ててくれた両親にはただただ感謝しかありません。

追記ですが、私の長女はいま、和菓子の世界に入って五年目となります。随分仕事場でも鍛えられているのか、たまに帰省して一緒に仕事をするとその力の強さに驚きを覚えます。

一般女性よりも腕っぷしの強い女性に成長してくれました。

頼もしい限りです。