松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



正月の準備 ごぼう編

あと半月もしますとお正月。

若かりし頃は冬休みが待ち遠しくて待ち遠しくて。そしてお正月のお年玉も楽しみで仕方ありませんでした。

しかし、大人になって和菓子屋という仕事を持つようになりますと、そうも言ってはいられません。

私たちの仕事は世間一般の方々がお休みの時に忙しいのが常であります。お正月、ゴールデンウィーク、お盆などはその代表でありますし、土日祭日もやはり仕事であります。

お正月が近くなりますと、様々な下準備にも追われてきます。

今回はごぼうのご紹介です。



細めのごぼうを選定し、しっかり洗ってから長さを揃えて切り分けます。



次にしっかり灰汁抜きをして柔らかく煮上げます。



花びら餅に使用する大きさに切り揃えて蜜漬けします。

ごぼうを洗ってからざっと四日間で仕上げです。とても手間がかかる仕事ですが、このごぼうも自分で仕上げないといい花びら餅は出来上がりません。

缶詰でも簡単に手に入る花びら餅のごぼうですが、食感や味わいが随分と手づくりのものに比べ劣ります。手作業で作り上げたごぼうはとても柔らかく、味わいのスッキリさが秀逸です。

食べ比べるとその違いは歴然です。

このごぼうを使った花びら餅は今月29日より販売開始いたします。

和菓子屋が持つ重要な役割

黒糖は皆さまもご存知のように原材料はさとうきびです。

原材料がさとうきびでも、その精製法によって出来上がるものが違ってきます。

当店で使っている和三盆糖も原材料はさとうきび100%です。しかし、黒糖と和三盆糖を食べ比べても原材料が同じだと言うことは知っていなければ全くわからないでしょう。

和三盆糖は食べてみますと、まずその口溶けの良さにびっくりします。そして、和三盆糖特有のコクのある味わいに驚かされます。

和三盆糖に比べて黒糖はより深いコク。そしていい意味でのエグみ。そしてどこか塩分のようなものを感じます。黒糖をそのままかじってみますとよりその良さが手に取るようにわかります。

現在、一般のご家庭ではグラニュー糖や上白糖を使用する事がほとんどで、さとうきび本来の深みのある味を身近に感じる機会が少なくなってきているのではないでしょうか。

和菓子屋はそんな意味合いでも重要な役割を担っているのだと私は常々考えております。



黒糖をふんだんに使用した大島きんとん。

丹波大納言小豆のこしあんを使っていますので、より味わい深いものに仕上がっているのではないかと自負しております。

寒い時期にはぴったりの黒糖。是非一度お召し上がり下さいませ。

樹木希林さんに会い行ってきました

どうしても観たかった映画「日々是好日」を観に行ってきました。



時間の無い中、何とか間に合った次第です。

茶道の先生と生徒の心のシンクロ。そして生徒である主人公、黒木華さんが茶道と出会い月日を重ねていく姿をとても素敵な映像とともに鑑賞する事が出来ました。

静かに過ぎ行く二時間の中に日々の心の在り方、心の落とし所がぎゅっと詰まっていました。

ついこの間、残念ながら世を去ってしまった樹木希林さんの遺作。彼女の所作の美しさ、そして落ち着き払った穏やかな表情と声。

また、生徒役の黒木華さんと多部未華子さんの対照的な役柄の配置などもぴったりと当てはまっていたこともあり素晴らしい映画になったのではないかと思います。

この映画で名女優、樹木希林から黒木華へのバトンタッチがしっかりと成されたようでとても感慨深いものも私の中ではありました。

一年を12カ月に分けて季節を知る事を私たちは知っています。しかしそれをもっと細かく知るために二十四節気というものがあり、それをもっともっと細かくしたものが七十二候があるのはあまり知られていない事かもしれません。

季節をより身近に感じるにはやはり二十四節気が必要です。この映画では場面を二十四節気に当てはめ、それぞれのシーンと二十四節気をリンクさせたところにも大きな感銘を受けました。

追記

私は映画のエンドロールはあまりしっかりと見ない口ですが、今回は何故か最後まで座っていました。そうしましたところ、菓子協力店の中に私の京都修行時代の先輩のお店の名前を見つけました。とても嬉しかったのでここで書かせていただきます。