松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



はざま

当店の通年商品「羽二重巻」は季節に応じてあんの色を変えております。

春の桜の季節は薄紅色、それが過ぎますと緑やブルーの色へと変化させ、秋になればまた紅色へ、そして冬場になりますと何も着色しない白になります。

あんの色合いだけでも季節感を表現できる良さがここにあると思います。

あんの色合いで季節感を表現できますのは白あんと限られています。当店の場合は岡山県備中白小豆を使っておりますので、普通の白あんよりは随分クリーム色がかっているように見受けられると思います。

着色しても少し抑えめでシックな雰囲気になるのが備中白小豆の特徴でもあります。味につきましてはは言うまでもありません。



さて、当店の羽二重巻ですがちょうど本日はざまの時を迎えました。

薄紅色のあんが終わり、この先このあんを新たにご用意するとジャストタイミングから逸してしまいそうでしたので若緑色であんを炊くことにしました。

そんな理由から本日だけは羽二重巻、2種のあんのご用意がございます。

ご希望がございましたらご指定も可能です。お気軽にお申し付けくださいませ。

さくらさくら

桜が隆盛を極める頃です。

色合いの優しい桜はやはり日本の代表花ですね。人の心まで優しくしてくれるようです。



松屋長春の羽二重餅は現在、桜の焼印を施しております。

先日まで桜花一輪の焼印でしたが、現在は枝芽付きのものをあしらっております。

桜満開もとても美しくて素晴らしいのは間違いありませんが、桜の花が風に翻弄され川面にはらはらと舞い散る。そしてゆるやかな川の流れに身を任せて花筏となってゆく姿は毎年私の心を捉えて離しません。

そんな季節がそろそろやってきます。

今か今かと待ち焦がれる私です。

旬とは

昨日ご案内しました草餅ですが、旬を迎えております。

春先のよもぎは若葉で柔らかくエグ味やアクも少ないですし、香りにも癖がありません。そんな事から初春に餅の中によもぎを一緒に突き込み食べられてきました。昔から日本人にも馴染み深い和菓子の一つでもあります。昔の人々はよもぎ餅の季節を今か今かと待ち望んでいた事でしょう。

このよもぎ餅、松屋長春では草餅と呼んでおりますが旬の時期を過ぎますと、餅に混ぜ込んだよもぎが原因で少し食感がかわってきます。これは気温の上昇や湿度にも密接に関係しています。

そうしますと、あんなに美味しく感じていた草餅が何故だか口にも合わなくなってくるものです。

本日ご紹介の生菓子はわらび餅。



こちらもそろそろ終わりに近づいてまいりました。

このわらび餅も草餅と同様に、暖かくなるに従ってきな粉が口に合わなくなってきます。こちらも気温、湿度と関係があり、きな粉がどうしても湿りがちになります。

現在は湿り難いきな粉なども出てきてはいます。しかしこれはこれで湿り難い問題は解消されますが、味に難あり。きな粉の良さが半減するのです。

そのような理由でわらび餅もゴールデンウィークを境に毎年製造を終えるようにしているのです。

お客様からのご要望がありましても、美味しさを最優先に考えてつくっております。つくる時期というものを大切にしていきたいと思っています。

「美味しいものでも来年までの楽しみにしておこう」

現在では魚介類やフルーツをはじめ食材全てが長期保存や冷凍保存の進化により、いつでも旬のものを食べられる世の中になってはいます。

が、季節を五感によって繊細に感じ取る事のできる私たちにとってそれは本当に幸せな事なのでしょうか?

私はやはり季節とともにもたらされる天からの恵みを一番いい時に食すという、とても趣深い行為を大事にしたいと考えます。

それが旬であり、いつも時代も忘れてはならない重要な事であるように思います。