松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



花いかだ

桜の花がはらはらと川面に舞い降り、川の流れに身を任せ列をなして流れ行くその姿は私の中では桜の一番大好きな風情であります。

そのような風情を昔から「花いかだ」と言います。桜の花が流れる様を筏に例えこの呼び名となりました。

昔の人々は洒落っ気もあり、四季折々の素晴らしさを例え言葉で表現することも上手であったことが伺えます。

今年は桜の花をゆっくりと眺める事が全く出来なかったのですが、配達に出かけた際に地元を流れる大江川や五条川に目を向けたところ、この「花いかだ」を少しばかりではありましたが垣間見られる事ができました。



羽二重餅製の「花いかだ」をお店に並べました。

一見、川の流れだけを表現したように思われるでしょうが、あえて表面には桜をあしらう事はしませんでした。

中に使った備中白小豆こしあんを優しいさくら色に染め、お客様に口にしていただいた際に春の情景を思い浮かべて欲しいと思案した次第です。

桜の美しい季節がそろそろ去り行きます。

なごりとして趣深い季節を楽しんでいただけましたら幸いです。