松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



おりべ

桃山時代。

千利休が没した後、第一人者となった古田織部。

彼が好んで使ったとされる陶器が織部焼です。

その特徴は深い緑色。少し黄色を刺したような緑色は当時の人々を非常に驚かせ、魅了しました。

和菓子の世界でも織部と呼ぶ和菓子があります。

レトロでクラシック、伝統的な和菓子として現在でも大切に受け継がれているものです。

薯蕷製の蒸し生地に、中はあっさり喉越しの良いこしあん。

織部の配色、菊の花の焼印を施しシンプルに仕上げたものです。

織部焼のような深い緑色にできない(しなかった)理由ですが、色だけは忠実再現し過ぎてしまうと逆にマイナスの効果が表に出てきてしまうからであります。

松屋長春の職人は父、母そして私の三人です。

父と私が成型や着色に携わっているわけでありますが、形や色は抽象的なものを好む傾向があります。

そのような趣向といいますか、好みの方向が父と同じで本当によかったと思う今日この頃です。

好みや経営方針が真逆ならば、毎日ケンカしなければなりません。

本当にありがたい事であります。