松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



いも

今年の十五夜は10月1日です。

十五夜は中秋の名月とも言います。

中秋の名月は旧暦の8月15日の満月という規定があります。旧暦で言うところの秋が7月、8月、9月。秋3か月のうちのちょうど真ん中が8月なので中秋の名月となったわけであります。

中秋の名月にはお供え物が必須。すすきは一般的にとても有名で広く知れ渡っていると思いますが、他にも秋の収穫を感謝し、収穫された農産物を同時にお供えしたのです。

枝豆や栗などと並んでお供えされたものに里芋があります。

そんなところから十五夜や中秋の名月と同じように芋名月とも呼ばれるようになりました。

いくつも呼び名があると迷ってしまいますけれども。



里芋を模した和菓子がお店に並びました。

私の修行先である京都の末富時代につくっていたものと同じデザインです。

同じデザインのものをこうしてつくっていると、鼻先を優しくくすぐるような懐かしい気持ちに包まれます。

そのために私は末富で覚えた和菓子を一年で何種類かお店に並べることにしているのかもしれません。

ミスター金麦

ビールをたくさん飲む我が家は、一般的に言われている「ビール」と呼ばれるものは金銭的にスイスイと気軽に飲めません。

外食に行った際にだけ、自分へのご褒美として正式なビールを飲むようにしています。

経済的にも優しくて、気兼ねなくおいしく飲めるのはどんなものがいいのか。

試飲を重ねた上、安い新ジャンルの金麦が一番美味しいというところに行き着きました。

それからはずっと何年も金麦ばかり家では飲んでいます。

近くの酒屋さんの広告が入ると一気にケース買いをするのですが、たくさん買うので店員さんに覚えられてしまいました。

買いに行く度に店員さん全員に挨拶されてしまう始末です。

「こんにちは、松屋長春さん」と。

どうして私のお店の名前まで知っているのでしょう?自己紹介したわけでもないのに。。。

おそらくお店の中では松屋長春さんではなく、ミスター金麦!とか呼ばれてるんだろうなぁ。

とても恥ずかしい。

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おりべ

桃山時代。

千利休が没した後、第一人者となった古田織部。

彼が好んで使ったとされる陶器が織部焼です。

その特徴は深い緑色。少し黄色を刺したような緑色は当時の人々を非常に驚かせ、魅了しました。

和菓子の世界でも織部と呼ぶ和菓子があります。

レトロでクラシック、伝統的な和菓子として現在でも大切に受け継がれているものです。

薯蕷製の蒸し生地に、中はあっさり喉越しの良いこしあん。

織部の配色、菊の花の焼印を施しシンプルに仕上げたものです。

織部焼のような深い緑色にできない(しなかった)理由ですが、色だけは忠実再現し過ぎてしまうと逆にマイナスの効果が表に出てきてしまうからであります。

松屋長春の職人は父、母そして私の三人です。

父と私が成型や着色に携わっているわけでありますが、形や色は抽象的なものを好む傾向があります。

そのような趣向といいますか、好みの方向が父と同じで本当によかったと思う今日この頃です。

好みや経営方針が真逆ならば、毎日ケンカしなければなりません。

本当にありがたい事であります。