松屋長春の和菓子便り
尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。
からっころも〜〜
からころも(唐衣)
きつつなれにし(着つつなれにし)
つましあれば(妻しあれば)
はるばるきぬる(はるばる来ぬる)
たびをしぞおもふ(旅をしぞ思ふ)
在原業平が都に残してきた妻を思い、かきつばたの咲き誇る遠い地で詠んだとされる有名な和歌です。
この和歌はとても上手に考えられていて、五つ行の頭文字を拾ってみると、「か、き、つ、は、た」となります。
そうです。満開のかきつばたの花と美しい衣装をまとった妻の姿を重ね合わせて業平は詠んだのです。
とても気品に溢れた和歌であると感心させられます。
本日ご紹介の和菓子は私が京都の末富でお世話になっていた頃に習いました。
旦那さんが毎年この季節を迎えると、私たち修行の者たちに「ええか。唐衣はな、こんな意味があるんやで。よく覚えておきなさい。」
そうおっしゃっていました。
旦那さんのこの和歌のうたい方にはとてもクセがあり、私はおどけて仲間たちの前でよくモノマネを披露したものです。
「からっころも~~」
あの声色、仕草、そしてなんとも言えないふくよかな顔までをも鮮明に思い出します。
旦那さんは現在、85歳を超えてなお現役でいらっしゃいます。
私も生涯現役を目指しておりますが、果たして旦那さんのお年まで元気でいられるかはわかりません。
そんな意味でも、旦那さんに対しては本当に尊敬しかございません。
思い出深き和菓子「唐衣」。

本日より販売開始です。