松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



やすこさん

無性に「おから」が食べたくなり、人生で初めてつくってみることにしました。




「おから」















私にとって、「おから」にはとてもいい思い出があります。




私のおばあちゃんのお友達であった、やすこさん。




近所にお住まいだったやすこさんは、いつも我が家へお手製の「おから」を持ってきてくれました。




大人になった今でも、私にとっての一番美味しい「おから」はやすこさんがつくってくれたものです。それはずっと変わっておりません。




おばあちゃんが亡くなっても、それまでと全く変わることなく、あの美味しい「おから」をつくってはつくっては何度も何度も私のもとへ届けてくれました。




やすこさんは、私がやすこさんの「おから」が大好物だという事を知っていたのでしょう。




「ゆうちゃん、またおからつくってきたからね~」




あの優しいか細い声が蘇ってきます。




この文章を書いていても涙が溢れ出てきます。




思い返してみると私は近所の人たちに随分かわいがられて育ってきました。




真向かいの布団屋さん、大工さん、斜め前の米屋さんに電気屋さん。




みなさんの家でご飯を食べさせてもらったり、泊めてもらったりして、本当に自分の子のようにずっと接してもらいました。




夜の8時9時あたりまで田んぼでザリガニやカエルをとって遊んでいた私を「ゆうちゃんが人さらいにあった!」といって、迷惑をかけた事も昨日のことのように懐かしく思い出します。




家族だけでなく、多くの人たちの愛情をいっぱいに浴びて今の私があります。




感謝しかありません。




随分と話が逸れてしまいました。




「おから」づくりに戻ります。




やすこさんの「おから」に、どんな具材が入っていたのかどうやっても思い出せません。




鶏肉やネギが入っていたような覚えがあるようなないような。。。




感覚だけで今回つくった次第です。




にんじんの千切りとおあげさんだけ。




あとは出汁とお砂糖と味醂と日本酒と醤油だけで仕上げました。




やすこさんの「おから」には到底及びませんでしたが、自分手製の「おから」をつくって食べたことで、あの時の優しいやすこさんに久しぶりに会えたような気がして嬉しかったです。




夕飯を家族と食べながら、やすこさんの「おから」の事やご近所に住んでいたお世話になった人たちの事を両親とも話せて、とても幸せな気持ちに包まれました。




やすこさん、本当に優しくて優しくて。




小学生の僕はやすこさんの事、大好きだったです。




ありがとうございました。そして本当に本当にお世話になりました。




僕はいつまでもやすこさんの事を忘れません。