松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



和菓子屋が持つ重要な役割

黒糖は皆さまもご存知のように原材料はさとうきびです。

原材料がさとうきびでも、その精製法によって出来上がるものが違ってきます。

当店で使っている和三盆糖も原材料はさとうきび100%です。しかし、黒糖と和三盆糖を食べ比べても原材料が同じだと言うことは知っていなければ全くわからないでしょう。

和三盆糖は食べてみますと、まずその口溶けの良さにびっくりします。そして、和三盆糖特有のコクのある味わいに驚かされます。

和三盆糖に比べて黒糖はより深いコク。そしていい意味でのエグみ。そしてどこか塩分のようなものを感じます。黒糖をそのままかじってみますとよりその良さが手に取るようにわかります。

現在、一般のご家庭ではグラニュー糖や上白糖を使用する事がほとんどで、さとうきび本来の深みのある味を身近に感じる機会が少なくなってきているのではないでしょうか。

和菓子屋はそんな意味合いでも重要な役割を担っているのだと私は常々考えております。



黒糖をふんだんに使用した大島きんとん。

丹波大納言小豆のこしあんを使っていますので、より味わい深いものに仕上がっているのではないかと自負しております。

寒い時期にはぴったりの黒糖。是非一度お召し上がり下さいませ。

樹木希林さんに会い行ってきました

どうしても観たかった映画「日々是好日」を観に行ってきました。



時間の無い中、何とか間に合った次第です。

茶道の先生と生徒の心のシンクロ。そして生徒である主人公、黒木華さんが茶道と出会い月日を重ねていく姿をとても素敵な映像とともに鑑賞する事が出来ました。

静かに過ぎ行く二時間の中に日々の心の在り方、心の落とし所がぎゅっと詰まっていました。

ついこの間、残念ながら世を去ってしまった樹木希林さんの遺作。彼女の所作の美しさ、そして落ち着き払った穏やかな表情と声。

また、生徒役の黒木華さんと多部未華子さんの対照的な役柄の配置などもぴったりと当てはまっていたこともあり素晴らしい映画になったのではないかと思います。

この映画で名女優、樹木希林から黒木華へのバトンタッチがしっかりと成されたようでとても感慨深いものも私の中ではありました。

一年を12カ月に分けて季節を知る事を私たちは知っています。しかしそれをもっと細かく知るために二十四節気というものがあり、それをもっともっと細かくしたものが七十二候があるのはあまり知られていない事かもしれません。

季節をより身近に感じるにはやはり二十四節気が必要です。この映画では場面を二十四節気に当てはめ、それぞれのシーンと二十四節気をリンクさせたところにも大きな感銘を受けました。

追記

私は映画のエンドロールはあまりしっかりと見ない口ですが、今回は何故か最後まで座っていました。そうしましたところ、菓子協力店の中に私の京都修行時代の先輩のお店の名前を見つけました。とても嬉しかったのでここで書かせていただきます。

私のバイブル

久しぶりに山田洋次監督の「隠し剣鬼の爪」を観ました。



山田洋次監督は監督人生で三作しか時代劇の映画をつくっておりません。

他の二作は



アカデミー賞の作品賞にノミネートされた「たそがれ清兵衛」と



木村拓哉主演で一躍名を馳せた「武士の一分」です。

全て藤沢周平が原作なのですが、「武士の一分」を除いて「隠し剣鬼の爪」と「たそがれ清兵衛」は私の生きる上での大切なバイブルとなっています。

「武士の一分」だけは内容に少し納得のいかない部分があるので、両手を挙げて賛成とはいかないのですが。

この映画たちが私の生きる上での指針となっている理由には、主人公が自分の役割を忠実に守ること。これが第一にあります。与えられた自分の仕事をあくまでも誠実に真面目に守り抜くことにとても美を感じるからであります。

もう一つは人との約束を守り抜くこと。誰一人裏切る事なく毎日を確かに生きる主人公に私は心を強く打たれるのです。

自分に正直に生きる

これが出来そうでなかなか出来ない事ではないでしょうか。

私は悩んだ時、迷った時にこの二本の映画を観て自分をスタートの位置に戻すようにしています。

昔、日本人が持っていた素晴らしいもの。美学をもう一度学びなおすために。

映画は私に多くの教訓を与えてくれます。

この二本の映画は自分の生き方を知る上での大切な私のバイブルなのです。

完全にリセットしました。また明日からリスタートです。

素晴らしいバイブルを見つけた事にとても幸せを感じます。

私が何度も何度も繰り返し繰り返し観ている映画のお話でした。