松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



暦の上では秋でも

おはようございます。

本日は二十四節気の立秋です。

暦の上では秋でも、全くそのような気分にはなれないほど熱波の日が続いております。

決まりとしましては立秋前は「暑中見舞い」、立秋後は「残暑見舞い」で手紙を出すもの。

しかし、これだけ暑いと「暑中見舞い」で手紙を出してもおかしくはないと思えてきます。

地球温暖化に伴い、こうした季節毎の決まりごとなどは少しずつ変化させなければならない時代になってきたのかもしれませんね。

昔からの教育を頑なに守り通すきらいがある日本人ですが、このようなところは柔軟に対応していかなければならないと私は思いますが如何でしょうか。

そうでもしないと暦と私たちの感覚のズレが広がってしまいますものね。

前置きが長くなりましたが、



生菓子はまだまだ秋とはなりません。

焼き菓子をお店に並べました。

ふわふわの卵の香り高き生地に丹波大納言小豆の粒あんを合わせました。

しばらくは夏の和菓子たちにお付き合いくださいませ。

素晴らしい絵画は観る者の心を豊かにしてくれます

月曜日が定休日の私はなかなか美術館や博物館、動物園や水族館などの公共施設に出かける事はできませんでしたが、最近は火曜日もお休みいただける日ができて、有り難いことにそのようなところへも出かけられるようになれました。

昨日、豊田市美術館までクリムト展を観に行ってまいりました。



クリムトと言えばこのユディトが一番有名ではないでしょうか。



ユディトⅠ

ユディトはⅠとⅡがあり、今回のクリムト展ではこの有名な方のユディトⅠが展示されていました。近くに美術館があり、このような素晴らしい絵画に会いに行ける事、本当に幸せに感じます。

恍惚の表情を浮かべるユディトと首を切り落とされたホロフェルネスの表情が対照的で、一見美しく見える絵を一瞬で身の毛もよだつゾッとさせるものにしてしまいます。

ホロフェルネスの首はユディトが金箔などを使い、豪華絢爛に描かれているのとは逆にとても暗い色彩で控えめに右下の位置に描かれています。ユディトそのものに惹きつけられ過ぎてしまうと気づかないほどであります。

クリムトの絵で私がとても特徴的だと思ったのは、配置の妙です。

もう少し中心に寄せてもいいのではないかと思う絵が数多くありました。

ユディトⅠはその絵たちの代表格なのかもしれませんね。

人が気づかない程度の縁に目を向けてもらえるよう工夫しているのではないか、そう私は感じた次第です。



実際に描き始める前の練習としての習作などにも目を見張るものがありました。

鉛筆一本で描かれた絵にもその曲線美の凄みが感じられます。



私がこのクリムト展で一番心を奪われた絵はこちら。

「ヘレーネ クリムトの肖像」

クリムトは亡くなった弟の娘を引き取ることになったのですが、その彼女への愛が溢れるとても優しい絵に引き込まれました。

実際に私は退場する前に2度ほどもう一度みたくなり、戻ったほどです。

有名な画家の展示会に行くと必ず思う事には、本人が描いた絵全てが一貫した同じような造りでないという事です。

画家になり、長きに渡って様々な美的感覚を取り入れながら成長するのです。

クリムトも同じように彫金から金箔にも手を出し、日本美術や日本芸術にも多大な影響を受けた事を知りました。

円熟味を増し、ベテラン画家になっていくほどその画家としての魅力が育っていくのでしょう。

また、クリムトの達筆さにも驚きました。手紙が何通か展示されていましたが、整然と並んだ彼の美しい字にも魅了されました。

素晴らしい絵画は観る者の心を豊かにしてくれます。

皆さまもクリムト展、是非行かれてはいかがでしょうか。

話は変わりますが、私の友人である名古屋フレンチの壺中天のオーナーが豊田市美術館にも名を変えて支店を出しました。

こちらはきちんとしたフレンチではなく、軽食も交えた洋食屋さんと表現したらいいのでしょうか。

お店の名前も壺中天ではなく、味遊是としてオープンしております。





ここにご紹介させていただきます。

オープンおめでとう。

相変わらずとても美味しいランチだったよ。

火炎瓶のかわりに花束を

人を感動させ、人の心を激しく揺さぶる。

それには何の理由もありません。ただ出会った時、瞬間的にそれは訪れるものです。

ここ最近、私の心を強く動かしたもの。

それがバンクシーです。



本を買ってしまいました。

バンクシーの作品全てではありませんが、世界各国で彼が描いたもの、そして彼のメッセージや考え方なども少しばかりではありますが垣間見ることができます。



「火炎瓶のかわりに花束を」

これは私が勝手にこの絵に名を付けたものです。

もともとの図案は怒りに任せた青年が火炎瓶を投げる。そんな姿だと思います。

モノトーンの青年にカラフルで美しい花束。

相反し全くマッチしないものを見事に同化させて平和な世界を願う素晴らしい絵へと昇華させています。

この絵を初めて見た時、私の中に衝撃が走りました。

見る側に語りかけてくるメッセージが物凄く強い。

また、受け手に平和とは何かを深く考えさせてくれます。

バンクシーはウォールペイント、つまり壁に落書きというものを基に活動を始めています。

当然、社会のモラルやマナー、ルールを無視した行動は非難されなければいけない行為であります。しかし、その範疇を超えた彼独特の強いメッセージがあるからこそ、多数の人々から賞賛されている理由ではないかと私は考えています。

せっかくなので他の絵も。



ゴミのポイ捨てが多い道なのでしょうか。

もともとあった壁の色や模様をそのまま上手に使った構図で、見る者に強いメッセージを投げかけています。



パレスチナ自治区の壁にに彼が描いた絵、二枚です。

がんじがらめで窮屈な世界からの自由。それを願い、祈るメッセージが存分に込められた絵ではないでしょうか。

危険をおかしてまで活動する彼の原動力は何なのか。私たちは今一度、しっかりと彼のメッセージについて深く思い巡らす時がすぐそこにきているのかもしれません。

今まで絵を見て感動した事は幾度もありましたが、強いメッセージとして絵を受け止めた事は一度たりともありませんでした。

声高らかに訴えるメッセージや文章による言葉のメッセージよりも静寂なる一枚の絵から伝わる強いメッセージにとても感銘を受けております。