松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



わらび餅と葛の違いとは

わらび餅の季節が過ぎゆき、葛の季節がやってまいりました。



「葛あやめ」と銘打ってお店に並びました。

これから8月末から9月はじめまでくらいは、葛の蒸し菓子が色を変え、形を変え、味を変えてお店に並び続けることとなります。

この葛菓子は、その透明感に特徴があると思います。葛という植物の根っこから採るでんぷん質に火を加えますと、この透き通った葛が出来上がります。

ここで追加の説明をしなければなりませんが、でんぷん質のものは必ず時間が経つと元の性質に戻るようになっています。ですので、1時間以上冷蔵庫などに入れておきますと、白濁してかたくなってまいります。これが本葛と言われるホンモノです。

しかし、現在はゲル化剤のようなものが多く出回るようになり、葛のように見えても全くかたくならず白濁もしないものもあります。それは見かけだけは似れども、味や香りは全くの別物なのです。

透明感の他、本葛の特徴にはその特別な香りと滋味深い味わいがあります。薬として用いられた文献も多く残されており、葛は昔は貴重なものとして大切にされてきました。食してみますと、葛にしかない深い味わいが残り、その香りが鼻に抜けます。

一方わらび餅はと言いますと、植物の蕨の根っこが採ったでんぷん質が原材料となります。

こちらにつきましても、ホンモノと類似品とがありますが、先ほどご説明しましたので割愛させていただきます。

本わらびの特徴は、やはりその弾力の強さにあると思います。粘り気の強さが美味しさの元となっていることは言うまでもありません。

わらび餅というのはもともときな粉をまぶして食す事が多いので、味や色はお客様にとっては分かりづらいと思います。

そこでご説明しますが、味は葛ほどの滋味深さはないにせよ、やはりわらび独特の味わいがあります。色につきましては深く茶色がかっており、葛粉のような純白さはございません。長く水に晒して精製してもその色というものは抜けないようであります。

このように本わらびと本葛の違いを長々と述べてまいりましたが、おわかりいただけましたでしょうか。

植物の根っこから採取したでんぷん質でもこれほど大きな違いがあるものです。

追記ですが、片栗粉というのはもともと「カタクリ」という植物の根っこから採取したでんぷん質でありましたが、大量生産できないことととても高価である事から、現在では馬鈴薯(じゃがいも)のでんぷん質を片栗粉という通称で呼ぶようになっております。

本当の名前は馬鈴薯でんぷんなのです。昔の名残から片栗粉と今でも言うようになってしまったのですね。

鼻をくすぐるにおい

春の風が表通りを通り抜けていきます。

否。

鼻をくすぐるこの風のにおいはすでに初夏の香りがするようであります。

今朝は雲一つない晴天で気温も適温と言っていいほどの心地よさであります。フラフラと外にお出かけしたいと思ってしまうほどのお天気です。

春から夏にかけて、「ああ、今年もこの季節に出会えて良かったなぁ」と思えるのは、こんな気持ちの良いお天気の日と雨の日です。

この季節の雨は大地が、自然がパッと明るくなるような目覚めを感じるところが私は好きであります。水を得た植物たちが生き生きと青々としてくる様はどんな芸術品よりも美しいものであるといつも私はそう感じています。

前置きが長くなりました。



ちょうど私の家の山椒の木には新芽が出ました。

この新芽を使って蒸し菓子をつくりました。



鼻をくすぐる初夏の香りです。

通路

端午の節句が終わりました。

ちまき、柏餅、その他の和菓子を買いにわざわざ松屋長春まで足をお運びいただきましたお客様、本当にありがとうございました。

今週日曜日までは引き続き休み無しで営業いたします。

今後ともお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。

今年のゴールデンウィークはいつもよりも余計に「ありがたみ」を強く感じた次第です。

弟家族が五人揃って、そして娘たちが不休でお店を手伝ってくれました。

また、いつもお店を支えてくれているパートさんたちも休むことなく一生懸命頑張ってくれました。

また、高齢の両親も力の限り一緒に仕事をしました。

こうしてあらためて振り返ってみますと、お店というのは自分だけの力でなく色んな人々の大きな支えあってやっと成り立つものなのだとつくづくそう思う次第です。

ちっぽけな私なぞは小指の先っぽほどの貢献しかしていないことを知る瞬間でもあります。

日々感謝の思いを持ちながら生きていかなければなりません。



写真はお店から一番裏にある仕事場の入り口までのアングルです。いわゆる鰻の寝床と言われるような非常に縦に長いお店であります。

その狭い通路を皆が毎日いったりきたり走り回ります。

私が生まれた時にはもうすでにあったこの通路。創業者である祖父母をはじめ、今まで松屋長春を支えてくれた人々が数えきれないほど通った通路であります。

多くの、本当にたくさんの人々の力によって育ててもらった松屋長春を、これから先もずっと支えられるよう努力してまいりたいと思います。

昨日、こんな事を仕事が終わってから思いふけってしまいました。

みんな、お疲れ様。そしてありがとうございました。今日からもどうぞ松屋長春をよろしくお願いします。

さ、今日も張り切っていきましょう!