松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



ころ柿

干し柿のことを枯露柿(ころがき)と言います。

枯露柿は甲州、山梨県あたりが産地です。

干し柿のつくりかたを簡単に説明しますと、渋柿の皮を剥きそれを紐で縛り吊るして干します。しばらくして甘みが出てきたら紐から外し、今度は平らなところへ置いて、乾かしながら接地面をかえて仕上げます。

最後の仕上げの部分、接地面をかえて仕上げるところですが、何度もコロコロと干し柿を転がすので「ころ柿(枯露柿)」と呼ぶようになったようです。

前置きが長くなりましたが、松屋長春の「ころ柿」がお店に並びました。



原材料に柿を使ってはいませんので、お間違えのないようお願い申し上げます。

生地には黒糖を使い、味わい深くしてあります。中は北海小豆のこしあんです。

では、今日も元気で仕事に邁進したいと思います。

がんばるぞ〜

ひめ

「姫椿」と銘打ってお店に並べました。



ぷっくりした形状と薄紅色の優しい色合いが姫を連想させるようです。

姫椿とは山茶花の別名であります。

そろそろ山茶花の花が隆盛を極める頃ですね。

山茶花の派生であり、旧稲沢市の市花であるベニサザンカもちょうどこれから真紅の花を咲かせる頃となります。

この姫椿、外郎製で中は備中白小豆こしあんです。

外郎製とご説明しますと、結構な頻度でお客様から敬遠されてしまいます。

私にはそれが何故なのか、全くわかりません。

京都の修行先では、この生地のことを団子生地などと呼んでいましたが、余計にどんな生地なのか想像もつきにくいかと思います。

やはり、外郎製と言うより他の呼び名は思い浮かびません。

外郎製の和菓子は、まず一年を通してつくることができるところがまず一番最初に挙げられる特徴ではないかと考えています。

夏は冷蔵庫で冷やしてもかたくなりにくいため、冷蔵庫で少しひんやりさせてから食べると涼しげで美味しい。

冬の寒い時期にもやはりかたくなりにくく、粉を纏わせるとやわらかな風合いに仕上がり、あたたかい印象をを受けます。

私個人的には外郎製の和菓子はいいところがたくさんあって、美味しいと思うのですが。

作り手、売り手のオススメと受け手、お客様のお好みには少しズレがあるのかもしれませんね。

このズレをできるだけ埋める努力をするのも私の大切な役割ではないかと考えます。

当たり前じゃないんだぞ!

当たり前である事を当たり前として受け止めている自分がいました。

今日もいつもと変わらず、丹波大納言小豆を炊いています。

父の時代はぎりぎりアウトかセーフかというところですが、祖父の時代は小豆を仕入れると、まずは石ころや形の悪い小豆を選り分けるところからスタートしていたようで、一日の仕事が全て終わり、夕食を食べてお風呂に入ってから小豆の選別をコツコツとしていたようです。

当然、あんを炊く機械もありません。大きな木ベラで炊き上がるまでつきっきりの作業が続きます。

蒸し器も自動ではなく、釜に水を貯めて薪に火をつけるところから始めなければならなかったようです。

ミキサーもないので、羽二重餅の生地も手で練っていたそうです。

今の私の仕事量に比べてやらなければならない余分な事が非常に多かった事、容易に想像されます。

また、クーラーや給湯器も無かった時代です。夏は当然猛烈な暑さに疲弊し切っていたでしょうし、冬の凍てつくような気温の中、しもやけだらけの手で洗い物をしていたことでしょう。

文明の発展とともに手間が省けたこと、時間の無駄が無くなったこと、楽に仕事をさせていただいていることをあらためて感謝しなければなりません。

創業者である祖父のパワフルで活力たっぷりの牽引力のおかげで現在の私がいられることを幸せに思わなければなりません。

当たり前じゃないんだぞ!

祖父から父、そして私へとバトンが渡されていくうちに徐々に一生懸命さが薄れていってはいけません。

そんな確認を自分の中で頻繁にしよう。そして娘にもしっかりと伝えていこう。

今日は朝からこんな事を真剣に考えていました。



さ、ガンバルぞ!