松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



ホンモノの美

稲沢市もそろそろ田植えが全て終わった頃であります。












緑と青のさかいめの美しさにしばし時間を忘れてしまいました。




小さな頃からずっと変わらず目にしているはずですが、毎年この時期になるとあらためて「これが私のこころの風景なのだ」と確認するのです。




用水のナマズや真鯉。そして白鷺の大群が田んぼに舞い降りる姿。




全部ひっくるめて私のこころの風景なのであります。




灯台下暗しとはこういう事をいうのですね。




実際に失ってからその大切さに気づくものなのです。




植物の力強さを一番感じるのが、ちょうど今なのではないかと私は思っています。




水が身体全体を潤し瑞々しさを増す。そして太陽の光が包み込み、風が優しくそっと頬をなでる。




早苗は自然の愛情をたっぷりと浴びてすくすくとこれからどんどん育っていきます。




春夏秋冬それぞれの空の色は違いますし、一言で稲と言いましても早苗の若緑色からぐんぐん育った濃緑色、そして刈り取られる寸前の黄金色まで千差万別です。




そんな季節各々のサインをふわっとキャッチできるような職人でありたい。いつもそう思っています。




私が大好きな景色たちは和菓子職人としての私の血となり肉となるでしょう。自然にしか出せない色彩はきっと和菓子職人としての私の感性に大きく寄与してくれることでしょう。




様々な事柄にアンテナをピン!と張り巡らせるのはとても大切な事であると思います。




しかし、こうしてふと気づくような美しいものに「ホンモノの美」は潜んでいるものです。




私は「ホンモノの美」にきっちりとフォーカスできるような人間を目指したい。




そのためには泰然自若でいなければならないと感じていますし、また常にありのままの自分であり続ける事がとても大切であると考えています。