松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



こんな時だからこそ

コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。

私の友人も多くが在宅勤務となってしまいました。

また、スーパーやショッピングモールでは買い溜めのお客様で溢れ返っています。また、患者さんたちの悲痛な声などもしばしばニュースで目にします。

人間とコロナウイルスの戦争は新たな局面を迎えたと言っても過言では無さそうです。

このような話ばかりを見聞きしますと、誰しも情緒不安定になりがちです。

私は70歳を過ぎた両親と仕事をしていることもあって、出来るだけ外出を控えて家にいる事が多くなってきました。

こんな時だからこそ普段なかなかできない事を見つけ、少しでも落ち着いて生活しなければならないと思っているところです。

近頃は自分のための時間があまり無かったように思えたので、私は自分の時間を読書に充てたり早く身体を休めたりする事に重点を置くように努めています。



私は近頃こんな本を読んで勉強しています。

日本人は世界で一番繊細な感覚を持ち合わせていると常々私は思っているのですが、色に関しても細やかに枝分かれさせ整理されている事をこの本たちから詳しく知ることができます。

日本の伝統色はなんと465種類にも分類されているんです。

植物や動物、自然から感じ取った色彩を詳細な説明文を付けて紹介してくれます。

このような色彩感覚を身につけて和菓子にも反映させられたら、なんと素晴らしいことでしょう。

とても興味深い本に出会いました。

霞をこう表現しました

「春かすみ」



そう銘打ってお店に並べています。

なかなか純白に近いものの写真を撮るのは難しいもので、上手に撮れていないことお許しくださいませ。

うららかな春の少し霞んだ景色を表現した薯蕷製の蒸し菓子となります。

薄紅色の同生地を裏打ちして、優しい色合いでピンクが透けるように設定しています。

そして「霞」を銀箔を散らすことで表現しました。

早朝、霞んだもやの中にうっすらと見える桜をイメージしています。

幻想的な景色はときに人を夢の中へと誘ってくれます。

今年は花見もままならないような事態がずっと続いております。

今年の私は人目を避け、夜桜をこっそりと愛でに出かけようと思案しております。

しっかりと薄紅色も判別できないような夜の花見も趣深いものかもしれません。

優しく、控えめな色合いで

優しく、控えめな色合いで白雪糕という干菓子を仕上げました。





一昨日に娘と知多半島へ出向いた際に多く見かけた菜花をこの目に焼き付けてつくりました。



雲一つない青い空に向かってまっすぐ伸びた菜花が、風に吹かれてゆりかごのようにゆらゆらと揺れる様子がとても私の目に美しく映ったのです。

菜花は菜花でしか放たないその香りもとても印象的で、近くにいなくともその優しい香りが鼻をくすぐってくれます。

キンモクセイやユリなどのような強い匂いではなく、どこまでも控えめでありどこか奥ゆかしくも感じます。

干菓子は特に私が修行した京都では、普段の着色よりもより強く色鮮やかにするのが常とされていますが、私がつくったこの白雪糕はあえて着色を意図的に抑えて仕上げております。

最後に白雪糕のご説明です。白雪糕は落雁のような干菓子です。原材料は餅米の粉2種類と砂糖が元となっています。

懐かしい味わいや香りが昔小さかった頃を思い出させてくれるような、そんな干菓子であると思います。