松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



からっころも〜〜

からころも(唐衣)




きつつなれにし(着つつなれにし)




つましあれば(妻しあれば)




はるばるきぬる(はるばる来ぬる)




たびをしぞおもふ(旅をしぞ思ふ)




在原業平が都に残してきた妻を思い、かきつばたの咲き誇る遠い地で詠んだとされる有名な和歌です。




この和歌はとても上手に考えられていて、五つ行の頭文字を拾ってみると、「か、き、つ、は、た」となります。




そうです。満開のかきつばたの花と美しい衣装をまとった妻の姿を重ね合わせて業平は詠んだのです。




とても気品に溢れた和歌であると感心させられます。




本日ご紹介の和菓子は私が京都の末富でお世話になっていた頃に習いました。




旦那さんが毎年この季節を迎えると、私たち修行の者たちに「ええか。唐衣はな、こんな意味があるんやで。よく覚えておきなさい。」




そうおっしゃっていました。




旦那さんのこの和歌のうたい方にはとてもクセがあり、私はおどけて仲間たちの前でよくモノマネを披露したものです。




「からっころも~~」




あの声色、仕草、そしてなんとも言えないふくよかな顔までをも鮮明に思い出します。




旦那さんは現在、85歳を超えてなお現役でいらっしゃいます。




私も生涯現役を目指しておりますが、果たして旦那さんのお年まで元気でいられるかはわかりません。




そんな意味でも、旦那さんに対しては本当に尊敬しかございません。




思い出深き和菓子「唐衣」。








本日より販売開始です。

パンドラの箱

エアロスミスの未発表音源がこの度発売されたので早速買った次第です。








彼らのアルバムはほとんど持っていると記憶していますが、ここ20年ほどは引き出しから一度も出した事はありませんでした。




エアロスミスは私にとっては大袈裟に言いますと、「パンドラの箱」のようなもので。開けてはいけない、そんなアーティストだったのです。




ちょうど二十歳から京都の修行先でお世話になったのですが、その頃私は氷河をも溶かしてしまうような恋に落ちていました。




ドライブする際は必ずエアロスミスのアルバムがBGMでありました。




そのような理由から、意図的にエアロスミスの曲を聴かなくなってしまったのです。




この度久しぶりに彼らのデビュー前のフレッシュなサウンドを耳にしました。




素晴らしいアーティストだと再確認しました。




パンドラの箱を開けてしまった私ですが、何のことはない。恐れおののく事などなかったのです。




あの頃のキラキラした思い出は忘却の彼方へ。長い時間が解決してくれたようです。




あらためてエアロスミスのアルバムを順に聴いていこう。そう思っているところです。

松屋長春の「色」

着色は職人の「クセ」と言いますか、「特徴」が出やすいものの一つです。




和菓子の色合いというものはお店によってそれぞれ違いますよね?




つくり手である職人の色彩感覚、好みというものがダイレクトに表れるものです。




松屋長春で私はちょうど今、中間職に位置しています。




父の色彩感覚が松屋長春の色としてお客様に認識されてきました。それを息子の私が父に歩調を合わせ、違和感なく着色してきたつもりです。




娘夫婦が一緒に仕事をするようになりました。父と私が共有している色彩感覚を新しい職人二人にも共有してもらえるよう、しっかりと伝えていけたらと思っております。




お店にこなし製の生菓子を並べました。








「藤しぼり」と命名した松屋長春の春の定番和菓子です。




思い描いた通りの淡く優しい色合い。




これが松屋長春の「色」なのです。