松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



シルクのように

前にもこのブログで書いたような記憶がありますが、私は娘たち三人を小さい頃から厳しく育ててきたつもりです。

よく鬼のような形相で叱られたと娘たちも今となっては昔を懐かしむように思い出話をしてくれます。

社会人になってから恥ずかしくないように、人としてのマナーやモラルの低い人間でないようにと心を鬼にしてやってきました。

しかし、その厳しさはずっと続くものではなく娘たちが大人に近づくにつれ、次第に薄まっていき今ではほとんど怒ることはなくなりました。

これは私が父から受けた教育方針をそのままなぞるようにしてきただけでありますが、それが間違っていなかったのだと昨日あらためてそう思いました。



昨日は次女の20歳の誕生日でした。

一生懸命やってきたつもりですが、片親なのでやはり足らないものはおそらく沢山あったと思います。

お互いに心が折れそうになった時にも何とか支え合いながらこれまでやってこられました。

とても感慨深いものがあります。



成人、おめでとう。

今まで以上に優しいお父さんでいるよ。

肌触りのよいシルクのような優しい愛情で

柏餅

柏餅、スタートしております。



柏餅は端午の節句には欠かせない和菓子であります。

それには深い意味合いがあります。

「昔、武家では菖蒲が尚武に通じることから端午が尊重されました。武家にとっては家の存続が最も重要な課題であります。元々家を継ぐのが男子と決まっていた昔は、男の子の赤ちゃんをとても大切にしていました。

柏には新芽が出てくるまで古い葉が落ちないという特徴があるため、そこに家の存続の願いを込めて柏餅をつくり、食べました。」

簡単にご説明しますと、このような事です。

私には息子はおらず、三人の娘たちに囲まれています。

私のように商売をしていると、「男の子が欲しかったわねぇ」などとよく言われたものですが、子供が揃って女の子で本当に良かったと思っています。

また、お店を助けてくれているみなさんも全て女性です。

完全に松屋長春は女系のお店ですね。

とても居心地のよい毎日を過ごさせてもらっていますし、感謝しかありません。

現在では柏餅本来の意味は薄れていき、この季節になると自然に食べたくなるから買って食べる。

そんな方も多いかもしれません。

このブログをお読みいただいた方には、頭の片隅にでもこの菓子の意味を知り置きながら。
ご家族とそんなお話に花を咲かせていただけましたら。

そんな風に思っています。

紫だちたる 藤たなびきたる

紫だちたる藤たなびきたる

枕草子の一節を少し拝借する形でそう書かせていただきましたが、大好きな藤の季節の到来です。

毎年心待ちにしている季節であります。

藤棚に藤の花房が整然と並ぶ姿は言葉を失ってしまうほどの美しさがあり、私個人的には桜の季節よりもこちらが大好きです。

満開の時期がゴールデンウィーク前後と、私の仕事の繁忙期と重なってしまうため、なかなかゆっくりと藤の花を愛でる時間は取れないのが残念です。

藤は桜と違い、花と葉が同時に芽吹きます。これも桜よりも私が好む一つの大事な要素であると思うのですが、皆さまはどうお感じになられますでしょうか。



餅米を元に作った昔からの保存食、道明寺粉を使った生菓子をお店に並べました。

清楚で可憐な藤を意識してつくりました。



私の家の藤の花ももうそろそろ満開を迎えます。