松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



重陽の節句

桃の節句、端午の節句、七夕などはとても有名で広く知られていますが、重陽の節句は節句の中でもあまり知られていないものであると思います。

重陽の節句は簡単に言いますと、邪気を払う意味合いを持つ菊の花を飾ったり、菊花を浮かべた菊酒を飲んだりして不老長寿を願う行事であります。

9月9日が重陽の節句の日。

和菓子界では「着せ綿」と呼ばれる代表菓があります。

どんなものかと言いますと、木ベラで菊の形にした練り切り(こなし)製の上に、真っ白な伊勢芋100%のきんとんをふんわりと被せた和菓子になります。

写真のものは木ベラで一弁ずつ細工をしたものであります。

こうしたものに、伊勢芋製のきんとんを被せるわけでありますが、残念ながら今年の伊勢芋の収穫はまだ始まっておりません。

材料がないため、頂に黄色のシベを可愛くあしらって仕上げた次第です。



このようになりました。

当然ですが、非常に集中しながら取り組まなければなりません。一弁一弁の感覚もヘラの深さも均一にしなければなりません。

比較的こうしたヘラ細工の和菓子は関東を中心に発展していると思われます。京都の修行時代は取り組むことがなかったのですが、東京二年間で習った時の覚えでこうしてお店に並べることができています。

振り返ってみますと、関東と関西。両方で習ったことによってそれが現在の私の職人としての知識や技術に大きくプラスに働いていると感じています。