松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



初心忘れられぬ風呂敷

ご注文のあった「盛夏」を先ほどお客様のところへお届けしてきたところです。












私は配達する時には必ず修行先であった京都「末富」の大旦那、山口富蔵さんからいただいた風呂敷を使うことにしています。




修行を終えて卒業した時に一枚、そしてどんなタイミングであったかは忘れてしまいましたが、卒業してから随分と経ってからお会いした際にもう一枚いただきました。




30年間も使うとさすがにボロボロになってきましたが、それでも私はこの風呂敷を好んで使い続けています。




なぜかこの風呂敷を見ると背筋が伸びると言いますか、シャンとした気持ちになるからであります。初心忘るべからず。そんな声が天から聞こえてくるような、そんな感じがするんです。




「風呂敷はな、こうやって包むんやで。慶事のときは菓子折りをこちら向きに、仏事のときには逆方向に包む。全てにはきちんとした決まりがあって、包み方にも作法というものがあるから絶対に忘れたらあかんで。」




今でも富蔵さんの穏やかながらも、厳しくもあったあの声と顔が目に浮かびます。




一般常識に始まり、全ての礼節というものを教えくださった師には感謝しかありません。




私はこれから先もずっとこの風呂敷を使い続けていきたいと思っております。