松屋長春の和菓子便り
尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。
渇水の御母衣ダム
「御母衣ダム」
ダム巡りを始める前、一番多く訪れていたダムがこの御母衣ダムかもしれません。
というのも、この周辺にはアマゴやイワナが釣れる川が点在しており、釣りへ向かうたびに自然とこのダムの脇を通ることになるからです。特別な興味がなくとも、ダム湖を横目に眺めながら車を走らせる。そんな付き合いが長く続いていました。
ちなみにこの御母衣ダム、サツキマスやニジマス、そして大型のイワナが狙える場所でもあります。知る人ぞ知る、というやつです。
家を出たのは朝6時半。長距離ドライブの始まりです。
東海北陸自動車道は、出発点である稲沢市から富山県までを結ぶ長い道。その道中には全部で56のトンネルがあるそうです。今回私は白鳥ICで降りたのですが、そこまででちょうど28個。半分のトンネルをくぐったことになります。
それに気づいたのは、トンネル入口の表示でした。名称と距離に目が行くのはいつものことですが、その上に「1/56」「2/56」と番号が振られているのを見つけ、思わず数え始めてしまったのです。単調になりがちな道のりに、小さな楽しみがひとつ増えました。
寄り道を重ねながら、ようやく御母衣ダムへ到着。

岩や砂利を積み上げて造る「ロックフィルダム」。その日本初が、この御母衣ダムです。




近くの御母衣電力館にも立ち寄り、あらためて知識を深めましたが、積み上げられた岩石の高さは131メートルにも及ぶとのこと。途方もない人の労力と時間が積み重なって、この姿になったのだと想像すると、ただ立っているだけの景色にも重みが増して見えてきます。
そして、今回もっとも印象に残ったのは水量でした。
かつての記憶とは明らかに違う水の少なさ。岸辺は大きく後退し、露わになった地面が広がっていました。静まり返った水面を見つめながら魚たちは大丈夫だろうかと、つい余計な心配までしてしまいます。

ダムも水があってこそ。
あの満ちた湖面を思い出しながら、また雨が巡り、この場所に水が戻ってくることを願わずにはいられませんでした。
小さなダムには、歩いて巡り細部まで味わえる良さがあります。一方で御母衣ダムのような巨大なダムには、ただそこに立つだけで圧倒される、景観の力があります。
これまで通り過ぎることの多かった場所に、あらためて足を運ぶ。そして、ひとつひとつを知る。
その積み重ねが、旅をより深くしてくれるのだと感じた一日でした。
これこれおじさん
松屋長春の常連のお客様で「これこれおじさん」と私たちが愛情を込めて呼ぶ方がいらっしゃいます。(写真はこれこれおじさんが乗られている屋根付きのバイクです。雨の日も風の日も必ずこのバイクに乗ってご来店くださいます。いや、くださいました。)

なぜ「これこれおじさん」かと言いますと、店頭に並ぶ生菓子を「これ!これ!これ!」と指を指しながら注文されるからであります。
最初は変わったお客様だなと思っておりましたが、この方実は日系ブラジル人でいらっしゃいまして。日本語をしっかり話されるので、意思疎通は普通に出来れど漢字(もしかしたら平仮名も)が苦手。そういう事だったのです。
今はスタッフさん達とも仲良くなり、色んなお話をされて帰られるようになりました。
実は昨日、ご来店最後の日でした。
帰られる時に家族みんなでご挨拶をしたのですが、込み上げるものがあったのは言うまでもなく。。、
お話を聞いたところ、36歳の時に来日され、36年という長きに渡って日本で働かれたそうです。ちょうど半分ブラジル、あと半分は日本。
これから3ヶ月、三重県に住むお姉さんと一緒に過ごした後、二人でブラジルへ戻られるとのこと。これで二度と日本に戻って来る事はないと思います。そう仰っておりました。
「出会い」は嬉しいものですが、「別れ」というのは寂しく悲しくとても切ないものであります。
ずっと松屋長春の事を忘れないでいてほしいです。私たちもあなたの事はこの先も決して忘れません。
長い間、松屋長春の和菓子を愛してくださいまして本当にありがとうございました。
ブラジルへ戻られてもずっとお元気で。そして懐かしいブラジルでの生活をどうぞ思いっきり満喫されてください。
柏餅と名城公園
柏餅の販売を開始してから、早くも一週間以上が経ちました。

これから5月半ば頃まで、引き続きお作りしてまいります。今年もぜひお召し上がりください。
松屋長春の柏餅の魅力は、次の三点に集約されていると考えております。
一、こしあんのあっさりとした味わい。口どけと喉越しの良さを大切に、特別に炊き上げております。
一、生地のもちもちとした食感。こしあんとの調和を重んじ、ほどよい弾力に仕上げています。
一、柏の葉の香り。包みをほどいた瞬間に立ちのぼる青い香りが、柏餅の爽やかさを一層引き立てます。
これら三つの点に思いを巡らせながらお召し上がりいただけましたら、この柏餅の味わいも、より深く感じていただけることと思います。
話は変わりますが、昨日は高校時代の友人二人と連れ立ち、名古屋へ食事に出かけました。
その道中名城公園(名古屋城の公園です)に立ち寄ったのですが、折よく満開を前にした藤の花に出会うことができました。
ほころび始めた花房から漂う、やわらかな甘い香り。
その香りに包まれながら過ごしたひとときは、私たち三人にとってこれから先も静かに心に残り続けるかけがえのない時間となりました。






