松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



清少納言と夕暮れ

「秋は夕暮れ」




清少納言がそう言ったように秋という季節は、やはり夕暮れどきに魅力を感じます。




たそがれてくると地平線が次第に紅く染まり、それが燃えたぎる火のようにゆらゆらと揺れるさまは、言葉を失ってしまうほどの美しさがあります。




本日より「SUNSET」(サンセット)と銘打ってお店に並べた新作です。








清少納言は春は明け方がよいとも語っています。




やうやう白くなりゆく(だんだん白々としてくる)と続けて書いているのですが、秋の夕陽がゆっくりと沈んで静かに紅く辺りを染めてゆく様子もやはり、(やうやう朱くなりゆく)と私はそう続けたくなります。




海と空のファジーな境界線、そしてあかね色の空の様子がしっかりとこの和菓子で表現できたのではないかと自分なりに納得しているところです。




ゆらゆらと静かに燃える姿を金箔と銀箔で表現しました。




写真でよりも実際に目にしていただきたい和菓子であります。

ダイナミック

まだまだ暑い日が続いております。




そのような時節に秋のおはなしをするのは少し気が引けますが、和菓子は季節を少し先取ってつくるのが習わしであったりしますのでご容赦ください。




秋の七草は萩の花、尾花、葛花、撫子の花、女郎花、藤袴、朝貌の花。




春の七草とは違って、食べられないものが多い秋の七草です。




本葛、撫子、萩に関しましてはすでに松屋長春の夏の和菓子としてご紹介していることと思います。




本日ご紹介の和菓子は桔梗(キキョウ)です。








そのまま常温でも、また冷蔵庫でひんやりさせても。それぞれの良さがある外郎生地です。




中は口溶けよく、味わい深い備中白小豆こしあんです。




この先、すすきの焼印なども追々お店に並べる予定です。




季節が過ぎゆくのはあっという間。




年齢を重ねる毎に月日が流れるのを速く感じるようになってきた気がしています。




人生は儚いものだと見紛いがちですが彩り豊かに、そしてダイナミックに生き抜いて行きたいと思っています。

生き地獄

最初に皆さまにお伝えしておきます。




私の大好物第1位は鰻。








小さい頃から私にとって鰻はどっしりとして、この先もずっと動くことのない大好物第1位なのです。




近頃はとても高価になってしまい、気軽に食べられるような庶民のご馳走ではなくなってしまったのがとても残念でありません。




鰻フリークの私としましては、一刻も速い産卵から養殖までの技術的な進歩を望みたいところです。




前置きが長くなりました。




ついこの間、岡崎の友人のお店へ遊びに行ってきました。




友人のお店はミシュランガイドにも掲載される岡崎の名店「懐食しばた」




その日彼は休業日でしたが、友達への差し入れとして鰻を一生懸命焼いていました。












土鍋でご飯を炊いて鰻は直焼きのスタイル。




私は目の前でホンモノの職人に戻った友人の作業を見ながら、鰻が焼けたかぐわしき匂いを嗅ぎつつ、ただただビールを飲んで待つだけでした。




ああ、生き地獄とはこの事を言うのだ!




初めて生き地獄というものを味わったけれど、こんなに苦しいものだったのか!




嗅覚から脳を通して腹が減ったと認識するシステムというのを直感的に感じた瞬間がありました。








柴ちゃん、今度こそは私のために鰻を焼いておくれ。




そして私を天国へといざなっておくれ。