松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



上を向いて

少し前にジョンレノンの曲、イマジンの事を松屋長春のブログで書きました。

イマジンは政治も民族も宗教も歴史も流通も山も海も全て超越し、人々の心に優しく染み込む歌であると思います。

日本にもそんな歌が一曲あります。

坂本九の「上を向いて歩こう」です。

ジョンレノンのイマジンと同様に世界中の人々が誰でも知っている名曲。誰の心にも染み込んでいく歌詞とメロディ。

私は以前東南アジアへ旅行した際に、仲良くなったその国の友人にこの曲の歌詞の意味を説明した事があります。(彼は上を向いて歩こうのメロディだけ知っていました)

私の頼りない英語力で「上を向いて歩こう 涙がこぼれないように」と訳しただけで彼は涙を流していました。

今は平和を心から願う時であります。そんな時にやはりこの歌詞とメロディが必要なのではないでしょうか。

全ての人々を包み込み、抱きしめてあげられる強さと優しさに満ちた曲だから。



昨日、一昨日と素晴らしいお天気の日でした。

今日も気持ちの良い天気になりそうです。

どんな時も踏ん張って、上を向いて生きましょう。

これが私の役割

この軽羹製の蒸し菓子を「春の詩」と名付けてお店に並べました。



春にはメロディなどなく、音符も付ける事ができませんが、春には軽快なリズムがイメージに合いそうです。

一見、うすぼらけと形容しても良いほどにうっすらと薄黄色と薄紅色と薄紫色を音符のように並べました。

ミニマルなこの和菓子にいっぱいの春のメロディを詰め込んだつもりです。

世界じゅうの人々が笑顔を忘れてしまいそうな、辛く苦しいニュースばかりを毎日目にしています。

和菓子職人としての私の役割は、人々に笑顔と少しばかりの安心感というものを皆さまに届ける事であるのではないかと近頃そんな風に強く考えるようになりました。

現実逃避という言葉にしてしまいますと、とても罰当たりな感覚になってしまうことを恐れてしまいますが、ニュアンスとしてはそんな感じになるでしょうか。

今までのようにどこへでも自由に出かけられず、家に閉じこもりがちな今だからこそ、私がこうしてご紹介いたします和菓子を写真だけでも見ていただき、ついででも良いので私のつたない文章をお読みいただいて、多くの方々に少しでもホッとした気持ちを持ってもらえたらいいな。

そんな風に心から思っています。

和菓子は随分昔から色んな方々の色んな人生の場面でそっと寄り添ってきました。

和菓子はいつの時も主役ではありませんでしたが、人の心にそっと優しく寄り添うのが役目であったと思います。

微力ながらではありますが可愛い和菓子たちと私のつたない文章で皆さまにこれからもそっと寄り添っていきたいと思っています。

たくさんの方々に少しでも笑顔が届きますように。

思い出の肉吸い

私は全身全霊で捧げた卓球をやめてしまってから黒鯛釣りに全勢力を傾けるようになりました。

以前よりとても気になっていた黒鯛の釣りクラブに入会し、黒鯛釣りとはなんたるかを全て教わった吉岡という面白い先輩に続き、私は小嶋という先輩と一緒に休みの日を共にするようになりました。

彼とはいつも一緒。釣りが本当に楽しいものだと教えてくれたのはこの人でした。

ある日、いつものように大阪の海へと釣りに行った際に難波グランド花月近くの有名なお店に連れてってもらいました。そのお店の看板メニューが「肉吸い」

肉うどんの汁だけみたいなものと白飯だけのシンプルな定食を彼と食べて親交を深めたのを昨日の事のように思い出します。

今夜はその懐かしくも甘い思い出いっぱいの「肉吸い」をつくりました。



昆布、続いてかつお節から出汁をとり、日本酒と味醂と醤油で味を整えて完成です。



私の中では小嶋さんの味、あれから何度もつくった私自慢の味です。

人生を線でなぞるのではなく、点で振り返っていくと数え切れないほどの忘れられない点が私の中に溢れかえります。

なかなか友人たちに会えない日が続いています。

こうした思い出の食べ物をつくる事によってあの時の自分に立ち返る機会とする事も今の自分にとってはリフレッシュできる一つの方法ではないかと考えています。

小嶋さん、落ち着いたらまた黒鯛釣りに連れてって。

こうして会えない中でも、いつも気にしてんだわ。