松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



ヴィ〜〜

私の娘たちと同世代くらいの若い方には、この話は通じないかもしれませんが。




私が若かりし頃、映画館は現在のスタイリッシュで居心地の良いものとは違って、ちょっとレトロであまり綺麗だとは言い難いものでありました。




今では信じられないでしょうが、映画は「二本立て」と言って一回の料金で二本の映画が観られるという、とてもお得感満載のスタイルで上映されていました。




ですので、映画を観に行くとなると入場してから映画二本の上映が終わるまで、休憩を挟むと4時間以上を要する一大イベントだったのです。




おマセさんだった私は幼稚園児くらいから映画と音楽に魅了されて、どっぷりと浸かっていましたので、小学生になった頃には日曜日には電車に乗って名古屋まで出かけて映画館で過ごす事が一番の楽しみでありました。(現在のように映画館が近くにありませんでしたので、映画館と言えば名古屋へ電車で!が両親との合言葉でした。)




映画館へオシャレして出かけるという事はちょっと「よそいき」の気分になれ、言ってみれば上流階級の世界に足を踏み入れたような少し背伸びした、そんなお行儀の良さに私は強く惹かれていたのかもしれません。




当時の映画館では、上映が始まる時にブザーが「ヴィ~~~!!!」と大音量で鳴り響くシステムになっていて、それを聞いた観客たちはその音が鳴った瞬間にピリッと気持ちが引き締まって、不思議と全員の話し声がピタっとやんだものです。




あの感覚って今の映画館には絶対にないですよね?




本日、こんなおはなしを何故書いたのかと言いますと。




私がいつもカステラを焼いているオーブンのブザー音が映画館の開始ブザーの音と全く同じであるからです。




毎回カステラを焼く時に、忘れないように焼成時にブザーが鳴るようにタイマー設定をするのですが、焼き上がると映画館のように「ヴィ~~~!!!」とブザーがけたたましい音で知らせてくれるんです。








いつもそのブザー音を仕事場で聞いている私ですが、映画マニアで育った私は国歌斉唱を歌うアスリートたちのようにピンと背筋を張って直立不動になってしまいます。




身体が映画開始の合図として認識してしまっているからでしょう。




直立不動になんてならなくてもいいのに。。。




バカですよね。




ヘンな癖で嫌んなります。




映画は今でも変わらず大好きで、映画館へはよく行くのですが。。。




あの頃の活気ある満席の映画館には今は絶対に出会えませんし、あの懐かしい大好きなブザー音も聞くことができなくなってしまいました。




私には昔よく行っていた、あの映画館のような雰囲気がやっぱりお似合いのようです。




あっ!!!




一番大事な事を書き忘れていました。




「美味しいカステラ、今日も焼き上がっています!」









今年の栗は素晴らしい

九月、栗きんとんがスタートした時に私は今年の栗についてご案内も含めてブログに書いたことと思います。




その際、栗を取引している業者さんから「今年の栗はすごくいいですよ!それも豊作になりそうです。」と嬉しい知らせをもらったので、ブログにはそのまま書きました。




実際には栗がスタートしてからすぐに「栗が無さすぎて困ってます。全く豊作ではなかったです。」と訂正のご連絡をもらいました。




栗の収穫が少なく、おまけに価格も高止まりのままですが、幸いにも栗自体の出来栄えはこれ以上ないほど素晴らしいものでしたので、収穫が極少ないことはご案内しなくても良さそうだと敢えてブログには書かなかった次第であります。




昨日仕上げた栗です。












やはり素晴らしいの一言。




品切れになるのは年末年始あたりとなりそうです。




今年のこの素晴らしい栗、是非それまでにお召し上がりくださいませ。

秋と鹿

春夏秋冬、いつの季節も鹿はいるのに「秋と鹿」はセットのように取り上げられるものであります。




和菓子の世界の図案では、紅に染まったもみじと秋鹿の組み合わせは代表的なものとして広く知られるものであります。




秋、鹿は恋の季節を迎えます。




そのような事が秋と鹿を結び付けたのかは私はわかりませんが、鹿は秋の季語でありますし、ことわざや和歌や歌集などにも昔からよく登場します。




熊は実りの秋にたくさん木の実など山の幸をたらふく食べます。他の季節よりも活発に動き回るのはもちろん長い冬眠に向けての準備であります。




鹿よりも余程熊の方が秋にぴったりではないかと私は思うのですが、秋に熊とはどうしてもならないようですね。




話が脱線してしまいました。




鹿の焼印を大胆に施して羽二重餅製の生菓子を仕上げました。








シックな色合いで秋らしく。




では、今週もどうぞお付き合いくださいませ。