松屋長春の和菓子便り
尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。
小さな冒険
小学生の頃の私は遊びに出かける時に必ず3歳下の弟を連れて出かける。両親とそんな約束になっていました。
お店に弟を残して出かけると、両親の仕事の手を止めてしまうから。
母からお願いされ始めた当初は「なんで俺が?」とめんどくさがっていたのですが、「ゆうちゃん、どこ行くの?」と可愛い声でいつもたずねてくる弟を置いて出かけるのがしのびなくなり、次第に弟と私はセットで遊びに出かけるようになりました。
商売屋の子供にはよくある話だと思います。
弟を連れて出かけた場所で一番遠かったのが岐阜の川。朝3時に弟を揺り起こし、自転車の前のかごに2人分のお弁当と水筒と釣りの仕掛けを入れた箱を入れ、後部座席の弟に竿を持たせて二人乗りで延々とペダルをこぎ続けるのです。(自転車の二人乗りは法令で厳しい取り締まりがありますが、昔は非常に寛大であったと思います。)
片道3時間半。行きは意気揚々と出かけるのですが、帰りになるとさすがに元気がなくなります。それでも弟との遠出は私にとって絶対にやめられない、ワクワクする小さな冒険であり続けました。
何故そんな話を書いたかと言いますと、映画「サバカン」を観終えて物語の内容と私たち兄弟の姿が妙に私の中でリンクしたからであります。

この映画で描かれているのはちょうど私が小学生だった頃のこと。
観進めていくうちに余計に昔の事を思い出してあの楽しかった日々をとても愛おしく感じました。
胸がギュッとなる、そんな感じなのです。
映画「スタンドバイミー」の中盤までの感覚と同じだと思います。
友人たちとの出会い、別れ。そして小さな冒険までもが私の若かりし頃とぴったりマッチしたのです。
久しぶりに「好きだ」と言える映画に出会えました。
弟と一緒に毎日遊びに出かけたおかげもあるのか、今でも彼とはよく出かけています。
何の遠慮もなく、楽しい関係が続けられているのは間違いなくあの頃の思い出が弟と私の中に深く染み付いているからなのでしょう。
早速弟にこの映画の事を教えてやろう。そう思っています。
追記ですが、この映画を観て無性にサバカン(鯖の味噌煮の缶詰)が食べたくなりました。
劇中の何度もこだまする「またね~」が今でもずっと私の中で響き渡っています。
レモンのうた
人の意識を覚醒させる果物「レモン」
詩人、高村光太郎が智恵子抄の中のレモン哀歌で「レモン」を取り上げています。
トパアズ色の香気、天のものなると表現した「レモン」を私はこの詩に出会ってから特別な果物として認識してきたように思います。
愛する妻との別れのとき。その一瞬をパッと明るく輝かせた「レモン」がとても神々しいものとして私の心の中にずっと残っているのです。
本日はレモンの果皮と果汁をたっぷりと含ませた「レモン羹」のご紹介にあわせ、「レモン」の事を少し書きました。

「レモン羹」をお召し上がりいただく際に高村光太郎のこの素晴らしい詩を合わせてお読みいただきたい。そんな風に思っています。





