松屋長春の和菓子便り

尾張稲沢の和菓子店、松屋長春の毎日を皆様にお届けします。 末長くお付き合いをよろしくお願いいたします。



ひしゃく

本日はDipperのおはなし。




英語でDipperはひしゃくの事。




Big Dipperは直訳すると大きなひしゃくとなりますが、北斗七星の事を指します。




夏の夜空の星座の代表格は北斗七星、冬の夜空の代表格はオリオン座でしょうか。




近頃、夜空をまじまじと見上げてみることがなくなってしまったなぁ。たまにはロマンティックに夜空を寝転がって見つめる時間くらい持たなければ。そんな風に思いました。




話がいつものように脱線してしまいましたが。




先日、倉庫の大掃除をしていたらこんなひしゃくを見つけました。












「ああ、そう言えばあったあった!」




錫製でありましょうか。腱鞘炎になってしまうほど、ものすごく重いのです。




創業時に祖父が揃えたものだと思いますが、現代のひしゃくと並べてみると外見から全く違うことがわかります。




おわかりになられるとは思いますが一応念のため。写真左のひしゃくは現代のものです。




あらためて感じたのは、まず材料を惜しみなく使うと言う事。そして、とてもとても丁寧に一生懸命一つずつ手づくりで仕上げていると言う事。




技術もさることながら、モノに対する真剣さがこちら側にギンギンと伝わってきます。




頭を叩いてみると、現代のひしゃくは「ポコっ」というひょうきんな音で軽い。ドリフやひょうきん族の類の小道具のようであります。




昔のひしゃくは怖くて叩けないほど重厚感たっぷりであります。もし叩いたならばコブができるか、もしかしたら失神するかもしれません。




機械に頼り、ベルトコンベア式で大量にものづくりが進んできたいま、バリバリ!ガチガチの職人というものが、この世から徐々に忘れ去られてきつつあります。




しかし、一つ一つを心込めてつくる事に私はやはり胸を打たれるのです。




材料の選定から商品になるまで、責任を持って自分でやり切ることに美徳を感じます。




これからも私は昔気質の職人であり続けたいな。




あらためてそう決心しました。




90年前のひしゃくからも学びはたくさん、たくさんあるのです。